東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

東方乱千天 ~序~

一章・何時だって異変の始まりはひょんな事なのです。

 

 

 

・・・・・、魔理沙が神殿を襲撃し、返り討ちにあってから。

 

魔理沙はリルアの言った通り、図書室の整理をした。半分程、魔理沙が燃やしたりリルアが切ってしまった為に消失したが、其れでもかなりの貯蔵量だった。ただ、中が敷き詰まった本棚は少ない。

 

魔理沙は、整理のどさくさに紛れて一冊の魔導書を拝借した。

 

タイトルは全く読めない為、こっそり白夜に聞くと、

 

「これは多分古代天狗語で書いてあるねー。残念だけど私も、今の天狗も読めないわ」

 

と言われた。神殿の連中には白夜以外に聞けないので、とりあえず他をあたってみた。

 

 

 

全滅だった。月の賢者も、御柱の神様も、花の妖怪も、化け狸も、その他諸々も。

せっかく拝借出来たんだから、何としても読みたい。無駄だと思いながら、次に阿礼と小鈴の所に行こうと人間の里前に降りた。

 

人間の里は、幻想郷の人間が唯一安全に活動出来る場所である。神殿の連中はたまに宣伝活動に来るが、その可能性は低い。あまりにもうろちょろしてると、どうしても気付かれるので、行く所を限定しなければいけなかった。

 

「どっか、この文字が読める奴が居ないかねぇ」

と呟きながら里の入り口に入った魔理沙。里に入ると、右手に大きな屋敷が見えた。屋敷の大きさは、阿礼の屋敷にも匹敵する。

 

―――――羅千天(らすあま)邸。羅千天家の主人と従者が住まう屋敷である。羅千天主人の名前は羅千天 風里(ふうり)と言うが、羅千天主人は実は人間ではない。駄目押しに言えば、従者も人間ではない。しかし、此れは人間の里全員が知っている。

羅千天家が、人間の里で地位を保っているのには、理由がある。

幻想郷がまだ山奥の人里離れた土地であったころ。つまり博麗大結界が築かれる以前の話だ。

幻想郷に当時の流行り病が流行し、里が壊滅的打撃を受けた。当時は効果的な治療薬が無く、人間の数が激減した為に妖怪にも大きな打撃を与え、幻想郷が人知れず無くなってしまいそうになったのである。

其処に、手をを差し伸べたのが羅千天 風里とその従者であった。

風里は幻想郷はおろか日本全体でも治療薬が無い病を、三日三晩祈祷を続けて病を幻想郷から祓ったのである。人間達は三日三晩祈祷を捧げた羅千天 風里に感謝し、里に大きな屋敷を造り、其処で住んでもらう事にした。

風里は嫌がったが、従者が説得して拠点を何処かから幻想郷に移す事になり、其れ以降ずっと幻想郷で静かにすごしていた。

 

「あー・・・、いたな。此処に読めそうな奴が」

此処の従者はたしか・・・・・、と考え、魔理沙は羅千天邸に入っていった。

 

入り口に一匹、式神が憑いた妖怪が居たが、快く入れてくれた。

「薫風様ですか?今、授業をしていますよ」

魔理沙は入り口からすぐの客間まで誘導された。

「授業が終わり次第ここに呼んでおくので、本でも読んで待っていて下さい。何かご用が有りましたら、呼んで下さい」

「おお、すまんな」

授業は正午位まで続くらしい。あと一刻程あるので、魔理沙は置いてある本を読むことにして、暇をつぶす事にした。

 

其れから一刻と半分程経過し、外の廊下から歩く音が聞こえてきた。襖が開き、魔理沙が会いたかった人が客間に入ってきた。明度の低い着物を着て、頭には天狗達が被ってるあの帽子がある。

「すみません、遅れました」

「大丈夫だぜ。久し振りだな、淵谷(えんこく)」

 薫風 淵谷。羅千天邸主人に遣える従者である。彼女は元々は人間だったが、山での修行を経て千年程前に天狗へと成り上がった。千年の間に多方面の知識を吸収して、今は里で専門的知識や礼儀・作法を教えている。里に居心地の良い風が吹くのも彼女の能力である。

誰とでも心を通わせ里では一躍時の人になった。

「どうしたんですか?私とて暇ではないのですが」

「あぁ、すまんな。ちょっと此れを見てほしい」

と言って魔理沙は、神殿で盗んだ本を取り出した。淵谷はその本を見るなり、顔をしかめる。それもその筈、一目しても読む気が無くなるような厚さだからだろう。

「・・・・・厚い、本ですね」

「あぁ、厚い本だ。但し、内容が他と違う」

魔理沙がページを開く。其処には、日本語とは思えない奇々怪々な文字が羅列していた。

「古代の天狗語らしくてな。翻訳して欲しいんだ」

「成る程」

ペラペラとページをめくっていく淵谷。速読しているのだろう。

「しかし内容が濃いですね・・・。翻訳出来ない事はないですけど、此れは相当時間が掛かりますよ?私でも、一晩程で終わりますが」

「大丈夫だ。頼んで良いか?」

「お任せ下さい」

「じゃあ私は此れで帰らせてもらうぜ。此処に居ても何も出来そうに無いからな」

魔理沙が立ち上がる。淵谷も分かりました、と立ち上がり、パンパン、と手を叩く。

「お客様が帰ります。誰か案内して下さい」

「はい」

外に待機していた、と言わんばかりの早さで応える使い。

「じゃ頼んだぜ」

「はい、任されました」

 

 

 

羅千天邸の一番北に、淵谷の部屋はある。六畳程の広さで大きな丸窓もあり、そこから三日月が窺える。いつもなら月を見ながら、明日の授業の内容について考えるが、今晩は翻訳に没頭していた。

「一晩で翻訳します、と意気込んだのは良いですが・・・」

内容が多いし、濃い。一晩で全ては、多少無理が有るかもしれない。

明日の授業内容の確認もしたいし。と思いながら筆を置き、気晴らしに夜空を見る。既に丑三つ時、草木も妖怪も眠る時間帯だ。里でも起きているのは自分だけだろう。

「・・・・・、風が強いですね」

夜に風が強くなることはよくあるが、今日は何時もよりも風が一際強い。天狗として薫風を操れる彼女は、この不自然さがどうしても気になる。お陰で翻訳に集中出来ない。そう思った時、

外に何かが降りる音がした。かなり抑えており、並の人間では気付かないような小さい音だったが、淵谷が気付かない訳がない。何者かな、と立ち上がる。すると、正体が自分から姿を顕にした。その顔を確認した淵谷は、貴女か、と再び座り直す。

「こんな夜中まで仕事とは、熱心ですね、文」

「お互い様です。怪しい話を聞いたので、取材しに来ました」

射命丸 文。幻想郷の新聞、【文々丸。新聞】を執筆している新聞記者の天狗である。淵谷とは天狗仲間で、よく話をする事が多い。

「怪しい・・・?私は翻訳を頼まれただけで怪しくないと思いますが」

文は淵谷の台詞を聞くと、おかしいですね、と顔をしかめた。

「確かに、その様な情報があったのですが・・・、貴女が言うならそうなんでしょうねぇ」

折角こんな時間まで残業してたのに、と肩を落とす文。淵谷はその光景を見てクスッ、と笑った。

「他を当たった方が面白い記事が書けると思います。あと、早くしないと『お、文じゃねぇか』と言いながら風里様が来ますよ?風里様とはあまり関わりたくないのでは?」

「そうですよねぇー。では失礼します、翻訳頑張って下さいね」

「頑張ります。新聞書いたら一番に持ってきて下さいよ?」

「勿論!今後も文々。新聞を御贔屓に!」

幻想郷最速、と言われる速読で走り去る文。淵谷は窓越しにその背中を見送った。怪しい風も文のものだろう、と確信した淵谷は、一度大きく伸びをした後、翻訳の為に机に向かうのだった。

 

 

 

 

東方乱千天、この話で更にオリキャラが増える訳ですが、これで本当に良いのか、と思いつつキーボードをうつ自分。

霧雨魔理沙の襲撃、からほんの少し後の物語。異変ものなので結構長く続きますそのつもりです。

次回には羅千天 風里も恐らく出てくるでしょう。多分。

では、次回もお楽しみに、ご意見・ご感想ありましたら軽い気持ちでコメントして下さいな。

 

更新は、試験のせいでだいぶ不定期になるかもです。