東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

東方乱千天 ~閑話・弍~

番外編2・先に言っておこう。東方は関係無い。

 

帝都から、神風ですら三日掛かる距離を、キングアトラスは信仰が戻った状態で急ぎに急ぎ、僅か一晩で通り越した。途中地上には敵の侵攻を受け止める要塞都市が四つ、大都市が三つ、小さな都市が複数見られ、どれも賑やかそうである。キングアトラスはその様子を空から確認した後、目的地へ再び移動した。

 

其れから更に丸一日。キングアトラスは『帝国第三境界壁』の付近に到着した。軍部にあった報告の通り、周辺から竜種の鳴き声が聞こえる。此れを常人が聞けば、震え上がるに違いない。妖怪や動物でもそうだろう。

帝国に存在する『境界壁』は、殆どが帝国の外側、つまり他国との国境線に存在する巨大な壁である。異国からの不法侵入を防止する他、戦争が起こった時に要塞壁として効果を発揮する。

「目的は群れのリーダーを討伐・・・・・だったか」

竜種の鱗は硬く、並の攻撃ではびくともしない。それどころか、重戦車の砲撃にも耐えるだろう。通常、竜種の群れを討伐するには、帝国武神群の一個神隊を派遣して掃討する。しかし、今回の竜種の群れは武神すら手を焼く程と考えて良いだろう。

帝国武神群は、帝国に住まう武神で構成された帝国自慢の部隊である。二柱で最小編成数・一個神隊を基に、全三百余柱の戦力で、統制・管轄しているのが、筆頭のサヨリアルカディアである。武神と言っても、殆どが現人神や妖怪等からの成り上がりで、自分勝手で他の兵団との仲も悪い。

まず、討伐したい目標を見つけなければならない。報告では、リーダーの竜は見た目がかなり老齢だが、他の竜種とは比べ物にならない実力だという。

とりあえず、近場の『衛星管理局』管轄の監視所に向かう事にした。『衛星管理局』は、帝国全土の治安維持と害獣監視、序でに近隣諸国の軍事行動を監視する、軍部が抱擁する局の一つである。害獣駆除の依頼があれば、付近の監視所が対象の害獣を監視しなければならない。なので、其処に頼る方が、自分で探すよりも手っ取り早く見つけれる。

此処から『帝国第三境界壁』に壁にそって南へ、歩いて十分程度の距離である。飛んでいけば一分も掛からない。キングアトラスは早速歩きだそうとして、

「閣下! キングアトラス閣下!!」

聞いた事のある声に呼び止められた。キングアトラスは声を掛けられた方向に顔だけを向ける。

此方に小走りで近付く、一人の少女。帝国軍兵士の中でも、大隊長に支給される軍服を着用し、髪は肩のところでバッサリと切られていて、真っ先に目がいくのは腰にある二本の打刀。

帝国武神群第九位神隊の前衛、エレナである。

「申し訳ありません閣下、お迎えが遅れまして」

「まぁいいさ。で、例の群れは?」

「はい」

そう言って、エレナはこの近辺が書かれている地図を取り出した。一見、境界壁とちょっとした山、おまけのように都市が有るだけだが、こうしてみると都市が近い。

「現地点が此処です。此処から北へ五里。其処で現在、帝国第二十四機械大隊と私の相方、それと【神討巨兵】が群れと応戦中。ですがその中に、リーダーは居ないという事です」

帝国でいう【機械大隊】は、遠隔操作で動く機械兵器に自立人型機械、アンドロイドが中心に編成された大隊である。人外の相手と戦闘する時に投入される部隊だ。

【神討巨兵】とは、神討兵器群に配属された神性兵器の事だ。通常兵器とは比べ物にならない火力・耐久力を持っている。

その科学の結晶の部隊すら苦戦する竜達の群れ。リーダーが居れば、壊滅は必至だろう。奇跡的に居なかった事に感謝しなければ。

「竜達の巣は、其処から更に北へ十里。リーダーは此処で休んでいると、偵察機械から報告が有りました」

偵察機械というのは、名前の通りだから気にしなくて良い。キングアトラスは、エレナの報告を静かに聞いて、一つ疑問に思った。

「巣の中には親玉一匹だけ? 本当かそりゃ」

偵察機械が調べた所は、一匹であったと」

「ふむ・・・・・そうか。よし、俺がそっちに行く。エレナは相方の助けをしてこい。何時も後衛の奴が、前衛に出るのは慣れてなさそうだからな」

「了解」

エレナは報告が終わったと、一歩下がって礼をする。それを視界の外側で確認したキングアトラスは、帯剣している一刀を抜き、音を置く程の高速で北へ向かった。

 

「っと。此処か、例の巣は」

一呼吸の間。一呼吸の時間で、キングアトラスは十五里の距離を飛び抜いた。見た所、見るからに固そうな巨岩で構成された洞窟である。周囲には焼け跡も残っているので、竜の巣と判断してもいいだろう。

何より洞窟内から、竜の鼾が聞こえる。

「さてさて、討伐しますか」

キングアトラスは、愛剣を携えて、胸を張って洞窟の中へ侵入した。

 

 

「閣下!! よくぞご無事で」

「大丈夫だって、あんな若輩に遅れをとる俺じゃあない」

そもそも、既に居なかったんだが。と言おうともしたが、それを言うとこの仕事が続行されてしまうので辞めた。

竜の鼾は、リーダー格ではない見張りの竜のものだった。そいつを捕えて脅迫すると、リーダー格の竜は昨晩に、大急ぎで隠居しに出たという。

(つまり逃げた、と言ってもなぁ)

これまでの移動時間が無駄になったと思うと溜息が出そうだが、それをあえて抑える。

「では我々は境界壁まで撤退しますが、閣下は如何します」

「ん? あぁ、俺はちょっとウアスの所に行かんにゃならん」

「ウアス・・・・・・様、ですか?」

「そ。あの二―トに、せっかく此処まで来たんだし会っとこうと思ってな」

ウアス、という神霊が城を構えている所までは距離が有る上に面倒な所に有る為、基本的に会おうとは思わない。だが、今日行かなくては次に行くのは何年先になるか分からない。

あの二ートの体調も気になるし。

「分かりました。では我々は早々に撤退します。では、失礼します」

「あぁ、またな」

エレナは一礼して、部隊が一時的に駐屯している地域に飛んでいった。暫くすると、部隊は境界壁のある方向へ移動が開始される。キングアトラスはそこまで確認すると、更に東の方向へ飛び去った。

 

 

「おいウアス、扉開けろ」

「扉をぶっ壊して入ってからから言うな!」

帝国の東の果て、の遥か天空にある『蒼の大陸』、その中心部に佇む大陸唯一の高層建造物『巨玲之城』。城の中に住むただ一人の神霊ウアスが、キングアトラスの豪快な進入っぷりに一喝した。

「お前はもうちょっと主神としても自覚を・・・・・・っ」

咳込んでしまうウアス。

「やっぱり、体調は大して良くなってないな」

そう言いながら、謁見の間にある適当な椅子をぶんどって座る。

「『蒼き神王』ともあろう奴が、精神を蝕まれるだけの病気で千年間療養とは。聞いて呆れるな」

「やかましいわ。私だって、好きで神王になった訳じゃないんだし。そもそも何時の話よ」

 

『蒼き神王』、それは彼女の服装からそう言われている。だぼだぼの蒼い服を身に纏い、玉座に座る少女。この少女が、遥か昔に天界の神国を統べていたと聞けば、誰しもが驚き目を丸くするだろう。

ウアス・ヴィルヴァール・幻・バール。創造神である彼女の本名である。

古代に神国を統べていた世界の覇者。天界で大規模な革命が起きた後は帝国に匿われているが、その存在は世界中に響き渡っている。

 

「だがなぁ。創造神は神霊の中でも群を抜いてあらゆる耐性を持ってるはずなんだが」

「知らないわよ。それだけ人智を超えた物なんでしょ。ていうか、人智じゃなくて神智だけど」

ウアスは咳込んで調子の狂った息をゆっくりと整えながら言う。

「で、何か用でもあるの? あったから来たんでしょ、こんな辺境に」

『蒼の大陸』は、大陸と言える程大きくない。中ぐらいの島程度の大きさである。星空が綺麗に見えるのも、高空なのに普通に活動できるのも、ウアスが空間にかけた術の御蔭であるが、大陸周辺と、地上に大規模な封印を施しているので、普通は近づくことも儘ならない。

ここまで来るには、その封印を突破して来なければならないから、此処にはあまり来たくないのである。

「あぁー。一応な。俺が世界の境界を越えて幻想郷から此処に来て、何か影響がないかと思ってな。サヨリは怖いし」

「あぁ、大した事じゃないわね」

ウアスは、開けている天井を、帝国全土の地図が書かれている星空を見る。半透明の地図の向こう側に、綺麗な星空が広がっているという形だ。わざわざ見にくい形にする意味が分からないとキングアトラスはつくづく思う。

「帝国外、他の国には所々境界に穴が生まれてるわ。運の悪いとこは、山岳ごと境界を超えちゃってるわね」

「大した問題じゃないな」

山岳ごと境界を越えて、幻想入りしてしまったらしい。この世界と幻想郷の間に開けた境界が開けてしまったのが原因だろう。今頃、幻想郷では妖怪達が人間達を食っていると思われる。境界を越えて無くなった地域は、その国の術師が対処するだろう。それが出来なかったら、帝国上層部のサヨリに頼むだろうから、何にせよ問題は無い。

紫は、これが目的で自分を元の世界に戻したのだろうか。

「いや、他国なんてどうでもいい。帝国内で何か問題は」

「ん? 帝国に、ねぇ。特にそれと言った問題は無いわね。忘れかけた妖怪が少しだけ幻想入りした程度」

ウアスは、息が整った事を良いことに、杯に酒を注いでいく。

「おいおい、その体に酒は毒だろ」

「この城の中に、『世界境界門』を開く事を勧めるわ。いちいち境界を無理に突破してきたら、幾ら私でも対処しきれない可能性がなくもない」

「曖昧だな。そして無視か」

ウアスが酒を注いだ杯が、キングアトラスの居る所まで一人でに飛んでくる。ウアスがそれらしい術をかけたからだろう。最初から、自分で酒を呑む気は無かったようだ。

「じゃぁ良いか。ウアス、早速門を開いてくれ」

「あら? もう行くの? ていうかサヨリに一言も無く」

「あぁ。また毒舌吐かれるのも嫌なんでな」

「そう」

ウアスは、キングアトラスの言葉を聞いて決意を受け止め、軽く腕を振るう。すると室内が一瞬揺れて、キングアトラスの目の前に魔法陣を浮かび上がった。

「この世界から消失し、幻想入りした紅竜玉神殿の大神木の麓に通じてる。扉を開くような軽さで世界の境界を越えれるわ」

「便利だな。幻想郷と同じような空間は創れないのに」

「・・・・・・・、紫には気付かれないようにしたけど。気付かれたら、何とか言って言い逃れて。あと、簡単に境界を越えれるようにしたはしたけど、頻繁に使わないで」

「あぁ、そんな事は分かってる」

キングアトラスの軽率な反応に嫌気がさしたウアスは、やや重い足取りで立ち上がる。

「キングアトラス」

「ん?」

キングアトラスが振り向いた瞬間には、玉座に居たウアスは既にキングアトラスの目の前に立っていた。

「どうした、そんな青筋立てて」

「喧しいわ。さっさと幻想郷に帰れ」

ウアスがキングアトラスの腹を蹴り、無理矢理魔法陣に乗せる。

「おまッ!! せめて酒を呑まs

問答無用に転送されるキングアトラス。ウアスは転送されたのを確認すると、自分の杯に酒を注ぎ、それを呑むのだった。

 

 

 

 

閑話、終了。

乱千天が終わる前に閑話が終わって良かったわぁ。

乱千天は、あと一話か二話。乱千天も、書き始めてだいぶ経ったんですねー。

自分の小説は、自分の歴史です。書き方とか、とくにね。

ああ、意外に長くなった。

乱千天、明日更新出来るかどうか、まだ分からんです。

では、ここらへんで身を引きますね。ではでは。

何時もながら、何かミスが有ったら教えて下さい。理由は省略。