東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

東方絶天火 ~Evil deity of the far-off continent.4~

「では巫女さん。ちゃちゃっと封印する準備に入りましょうか」
キングアトラスが軽い口調で始める。キングアトラスの隣にはボロボロになった白夜が座っていて、既に実際に準備に取り掛かっていた。
霊夢は流されたようにまた大広間に連れてこられたが、改めて見るとかなり広い。この広間には神気が満ちており、壁中に札が貼られている。その一つ一つが厄を祓う事に特化された種なのだろう。封印するにはうってつけの空間だと思える。
「こんなに設備が整ってたら、無理矢理神様を封印する事も出来るでしょ」
霊夢は大広間の天井を指差しながら、キングアトラスに問う。
「なんで私に力を貸してほしいわけ?」
「それは、博麗の巫女が、この大結界を維持してるから」
と、答えたのは準備中の白夜だ。口こそ開いているが、作業はそのまま続けている。その顔は真剣そのままである。
「博麗の巫女といえば、代々この大結界を維持する、巫女の中でも五指に入る技量を持ってる。加えて妖怪退治で精神面も鍛えてるから、封印時の圧力にも堪える事ができるはず。まぁ、本音は
「俺らの封印する技術が皆無って事だな」
キングアトラスが語尾を盗る様に言った。白夜はキングアトラスをキッと見て「テメェ・・・・・・」と訴えている。無論、キングアトラスはそれを無視。
「知らんて・・・・・・、あんたら、前は封印出来てたんでしょ?」
「まぁな。だが、『全知』のリルアともう一人、その分野に特化した奴に任せたからな。俺は神格に成ったアジ・ダカーハを受け取っただけ」
両手を挙げて降参のポーズをとったキングアトラス。
「基本、私ら神霊は面倒な事は別人に押し付けるから。赤の他人にでも」
と、白夜が言い加える。霊夢はそれを聞いてガックリと肩を落とした。
「あんたら、ホントにやる気あんの? まぁいいわ、さっさと始めましょう。で、具体的に何をすりゃいい訳?」
霊夢はささっと白夜が用意した陣の中に入る。白夜とキングアトラスは向き合ってしばし思案し、
「俺らは陣にアジ・ダカーハを抑えれる程度になるよう神力を注ぐ」
「で、霊夢はアジ・ダカーハが来たら、祈りでも捧けて封印する。多分出来るんじゃない? そこら辺は悪いけど知らない」
と、提案した。霊夢は適当だな、と苦い顔をした後、陣の真ん中まで移動し、正座した。
「まぁそれでいっか。それっぽいのは覚えてるし」
「じゃ、神力を注ぎますか」
白夜とキングアトラスは丸い陣の、霊夢の左右に分かれて正反対の所で正座し、呪文を唱え始めた。霊夢は、やるときはやるんだ、と思いながら合掌し、祈りを捧げ始めた。



「やはり、これ程の妖怪を集めてもこのザマか・・・・・・!!」
リーヤは言葉を失う。アジ・ダカーハは、これ程の妖怪その他を相手どって互角以上の戦闘を展開しているのだ。

神奈子の御柱を弾き返し。
レミリアの槍にものともせず。
幽香のレーザーを退け。
フランドールの体術すらも片腕で振り払った。

「困ったわ、私の能力が全く効いてないみたい」
「私もだよお姉ちゃん! この人、バラバラに壊せない!!」
幽々子が苦笑する。これはホントにヤバイんじゃないかしら、と思っているのだろう。逆にフランドールは歓喜していた。
「この人なら私と全力で遊べるわ!」

妖怪達の攻撃の五体で受けてなお、リルアの体で満身の状態でいるアジ・ダカーハは、奮闘する一同を見て、
「幻想郷の妖怪達は、この程度のものなのか?」
と嫌味を言ってみせる。近くで弾幕を張っていて、たまたま聞こえたレミリアは、
「な、なんですって・・・・・・!!」
勿論のように怒気をふくらませた。アジ・ダカーハの挑発に乗ったレミリアは味方の弾幕を無視し、自慢の俊足で一気にアジ・ダカーハの懐に飛び込む。
「くらえッ!!」
レミリアの華奢な体からとは思えぬ、二度目の強烈な飛び蹴りがリルアの体もといアジ・ダカーハの腹に直撃した。手応え有りと感じたレミリアは、そのまま追撃の蹴りを食らわせようと構えた。その刹那にも満たないその一瞬の隙に、
「再三、同じ手をして反撃が無いとでも思ったか」
アジ・ダカーハに両足を鷲掴みにされる。レミリアが脱出しようと行動に出る前に、アジ・ダカーハはレミリアハンマー投げの要領で投げた。
「なッ!?」
その速度は、加速が無いにもかかわらずレミリアの最高速度に匹敵し、また的確に萃香を狙っていた。
「ぅおいっ!」
無理矢理レミリアを受け止めた萃香。アジ・ダカーハは好機と、一気に一町(大体110メートル位)の間合いを詰める。鴉天狗や吸血鬼程には及ばないとはいえ、鬼の姿で瞬間間合いを詰められると誰でも驚くだろう。
「かぁッ・・・・・・!!」
アジ・ダカーハから放たれた、重い一撃。萃香レミリアを抱えた状態で、右腕一本で受け止めてみせた。
「流石鬼と言ったところか? 他なら腕が砕けるだろうに」
「誉め言葉をどうもッ」
萃香が反撃の一撃を加えたが、アジ・ダカーハはそれを紙一重でかわし、再び距離をとって両手を掲げる。

「『狂宴・死者の行進曲』!!」

不協和音と共に放たれる弾幕。空間すらもねじ曲げる邪悪な気配は、見るだけでも嫌悪感が湧いてくる。しかし、それ以上に不協和音が頭の中で反響する方が痛手であった。
気分を悪くさせ、動きを鈍らせ、弾幕を避けていても何時かは気を失ってしまう、そんな弾幕だ。
「本当に・・・やりにくいな全く!!」
神奈子が口を漏らしながら弾幕を避けつつ、反撃の弾幕を張る。しかし、大半はアジ・ダカーハの弾幕と相殺するうえに、当たっても効果が薄い。
激情する一同とは別に、紫だけはマイペースの攻撃を加えながら考え事をしていた。
(合図って・・・・・、キングアトラス、貴女は神力を注いでいて手が離せないはず。どうやって合図を出すつもり?)
キングアトラスが行ってしまった後に思った風穴。既に、どうにかしてアジ・ダカーハをスキマに入れ、陣に移動させる算段はついているが、根本的な連携が出来ない以上、この作戦は成功しない。
しかも、こうしている間も敵の行動は止まらない。
弾幕はなかなか当たらないな」
と、アジ・ダカーハは戦法を切り替える。弾幕を解除し、拳に力を溜めて幽香との間合いを一気に詰める。
「早い・・・・・・っ!」
精錬された反射神経でアジ・ダカーハの行動を読んだ幽香は、両手で一撃を受け止めんと構える。
「ふんッ!」
アジ・ダカーハの蹴りは幽香の両手のひらに、吸い込まれるように叩き込まれた。衝撃こそ緩和出来なかったが、本流のダメージは受け流すことが出来た。
だが、アジ・ダカーハはこれを知っていと様に電光の如く幽香の背に回り込む。幽香はその動きを見ることしかできず、背中に重い蹴りが加えられ、同時に骨が折れたような音がした。
「がはッ・・・・・・!!」
案の定幽香は吹き飛ばされる。その先にいた神奈子が抱き抱えるように受け止めるが、見るからにしばらくは戦闘継続が難しいだろう。
「くそっ!」
魔理沙八卦炉を掲げてラストスペルを放とうとした、その刹那の一瞬。

紅竜玉神殿に、雷が落ちた。それも、一つや二つではない。雷の雨と言わんばかりの数である。
そして、落雷と共に大声が響き渡った。

「【悪竜】アジ・ダカーハ!! 此処でお前を再度封印する!! 大人しく封印されろぉ!!」

何処ぞで魔理沙霊夢に敗北したリーザ・ヴァルボロストが雷をバックに立って叫んでいたのだ。
リーザは自分の背丈程もある剣をアジ・ダカーハに向けた。
「妖怪ごときが、と思っていたならこれで詰みだ!! スキマ妖怪、準備は八割方終わったぞ、スキマを開け!!」
リーザは、霊夢達との戦闘後紅竜玉神殿の誰かに回収されていたらしく、内部の動きを知っていた様に言った。真実であれそうでないであれ、これを信じるしかない、と紫は即座に判断し、レミリアを抱えたまんまの萃香に顔を向けた。
萃香、さっき言った手を実行するわ! お願い!!」
「おう、任せな!!」
萃香はその思いに直ぐ応え、レミリアを放り投げてアジ・ダカーハに突撃した。
「何をするつもりだ」
アジ・ダカーハは身構える。無論、萃香の馬鹿力の迎撃の為だ。萃香の馬鹿力を食らえば、アジ・ダカーハといえど多少の隙が出来てしまう。が、アジ・ダカーハの予想は大きく外れた。
「さっきはよくもやってくれたわね・・・・・!!」
レミリアが、萃香を大きく上回るスピードでアジ・ダカーハに接近していたのだ。その左手にはグング二ルの槍が握られている。高速で接近するレミリアに対して、反応が遅れたアジ・ダカーハは、そのままレミリアの必殺の突きを右手で受けた。ダメージこそ無いが、アジ・ダカーハの動きを止めることが出来た。そこに、隙ありと萃香の正拳がアジ・ダカーハの腹を襲う。
それと全く同じタイミングで、アジ・ダカーハの背にスキマが開いた。
「ぐぅ・・・・・・ッ!!」
スキマの先は、萃香達が用意している封印の陣である。アジ・ダカーハは右手でグング二ルを、左手で萃香の正拳を受け止め、スキマの一歩前まで退く。だがそれ以上は下がらんと踏みとどまった。
「な、嘘でしょ!?」
「くそ、まだなの!?」
「ぐぅ、我が・・・・、この程度でぇ・・・・・・!!」
アジ・ダカーハは萃香と同じ背丈にも関わらず、後退せぬように力で押し返してくる。その力は萃香レミリアの力でも止めれぬ程強い。攻勢が逆転しそうになった、その時。

「やったらやりかえされるのは、当然の事でしょう?」

幽香が、ボロボロの姿でアジ・ダカーハの前に立ちはだかった。幽香も、幻想郷ではトップクラスの怪力である。
幽香の憤怒の込めた一撃が、アジ・ダカーハの無防備の腹をえぐった。
「ぐぬ・・・・・!!」
多少足掻いたが、アジ・ダカーハも三者の力に耐えきれず、スキマの向こうへと投げ出された。

「・・・・・、後は頼んだわ、霊夢
此方の仕事は全て終わった。紫は、神殿の中の巫女と神霊の、幸運を静かに祈った。

 

 

 

意識が戻った時、アジ・ダカーハは既に檻の中にいた。

 

檻の柵には無数の札が貼られていた。札には「博麗」と刻まれている。アジ・ダカーハは試しに柵に触ってみたが、想像を絶する高熱で、反射的に手を離した。それは何度やっても結果は同じだった。檻の外をみると、足元には一定時間で光る紋章が描かれている。アジ・ダカーハはその紋章を見た事がある。遥か昔に、戦争を挑んで敗北し、神格にされた時の、呪縛の紋章と全く同じだった。

嗚呼、また負けたのか。そう思い、過去の出来事を思い出そうとする。その時、不意に外から声がかかった。

「住み心地はどうだ、アジ・ダカーハ」

檻の外から声をかけたのは、キングアトラスである。天上天下に名を轟かせる、一神話の主神。かつて戦い、敗北した相手。アジ・ダカーハは彼女の姿を確認するなり、大きなため息をついた。

「キングアトラスか。どうした、此処から出してくれるのか?」

 それを聞いたキングアトラスは、呆けた顔をし、プッと小さな笑いを漏らした。

「まぁ、そうだといいんだがな。お前の身柄は、紅竜玉神殿に一任された。で、お前を管理する立場として、聞きたい事がある」

アジ・ダカーハは目を細める。この状況で、聞きたい事とは何なのか。

「お前はまだ、封印が解ければ幻想郷を滅ぼしに動くか?」

キングアトラスはこれ以上にない真剣な声音でアジ・ダカーハに問う。アジ・ダカーハはその程度の事か、とまた大きな溜め息を吐き出した。キングアトラスはその行動を見てガックリと肩を落とす。

「此方が真剣に聞いてんのに、反応がそれか?」

「すまないな、その程度の疑問とは思っていなかった。しかし、それを聞いてどうする?」

「聞いてんのは此方だ」

「・・・・・・・・・・・・・・ふむ、」

アジ・ダカーハは檻の中から外を見上げる。紅竜玉神殿はガラスか何かの屋根で、室内からでも空を見上げる事が出来る。

太陽が西の空に沈みかけている、黄昏時だった。

「無い・・・・・、な。少なくとも、今は無い。幻想郷は思ったよりも素晴らしかった。我が此処から出て、再び支配に動けば、今度こそ魂魄まで滅却されるだろう。今回も、以前敗北した時も、我を殺せるのに殺さなかった。慈悲の下に我は生きてきたのだ。理由は分からんが、我はそこまで期待されていたのだ。もう野心を持とうとも思わん」

それを聞いたキングアトラスは、にやけるような笑顔を見せた。アジ・ダカーハはその笑顔を見るなり顔をしかめる。

「何だ、その顔は。一応、綺麗事を言ったつもりなんだが」

「いや、お前がやっと野心を捨ててくれたと思ってな、少し笑みがこぼれた」

と言いつつ、耐えきれず爆笑するキングアトラス。

アジ・ダカーハは変な目でキングアトラスを見る。キングアトラスは涙をこぼす程笑った後、少し笑みを残して、

「野心が無いなら大丈夫だろ。アジ・ダカーハ、お前を檻から出してやる」

「・・・・・、何?」

アジ・ダカーハは疑問に思った。破れたとはいえ、自分はこの幻想郷を滅ぼそうと企んだのだ。幻想郷の住民が猛反発してもおかしくない。

自分を討った妖怪達が、この神殿に雪崩れ込んで、自分を問答無用に殺しても文句は言えない立場である。

「感謝すると良いさ。何でも、この幻想郷は全てを受け入れるとか何とか、って紫が言ってた。だが、流石にすぐ解放ってのは難しい。まず力を封印して、ひとまずこの神殿限定に限る、っつー話だ」

「だが、我はあの鬼に憑いていたんだぞ? しかし今は隔離された。我には、」

体が無い、た言いかけたアジ・ダカーハは、自分の両手を見た。

そこには、自分の華奢な両手が有る。

「何故、我には体がある?」

自分の両手を他人の物の様に見つつ、キングアトラスに問う。キングアトラスは人には両手がある、と言わんばかりと当然の様に、

「この幻想郷では非常識が常識なんだと。そこらは今から勉強せにゃワケわからん」

両手を挙げて降参のポーズをとるキングアトラス。アジ・ダカーハは自分の手で自分の顔を触り、

自分の体に触ったのは、畿星霜ぶりだろう、と思わず笑みをこぼした。その笑みは元々残虐と殲滅を司った悪竜とはかけ離れた、一人の少女の純粋なものだった。

「了承した。我はこれから人妖を食らわん。キングアトラスの眷属となり、幻想が生きる大いなる加護の下に生きよう」

 

 

 

「・・・・・てなワケでアジ・ダカーハを解放したが、本当に良かったのか、霊夢?」

キングアトラスが博麗神社の賽銭箱に座り、竹箒で境内の落葉を掃除している霊夢に言った。

アジ・ダカーハの暴走から既に三ヶ月が経過していた。今はすっかり落葉の季節である。以前の異変は畏怖集めから暴走までに発展してしまった物だ。計算不足だった首謀者、キングアトラスが十中八九悪い。で、キングアトラスを中心とする異変側は、敗北したならとほぼ全ての情報を公開した。

元々、畏怖集めは力を数割取り戻し、その力で、リルアの魔法によって大軍を召喚する為の前段階。軍隊による武力で幻想郷の制圧を図ったものだった。気温上昇は太陽への畏怖をねらったもので、それ以上の目的は無かったという。

しかし、畏怖集めが大成する前にアジ・ダカーハがキングアトラスの力不足に気付いて逃走し、リルアに憑き、結果暴走にまで至ったらしい。

「いいわよ、別に。紫もいい、って言ってたし」

竹箒で掃除を続ける霊夢。キングアトラスは文書で「幻想が生きる地がある」として幻想郷をある程度知っていたが、本当にここまで抱擁するとは思ってなかった。

戦争犯罪人は当然打ち首。敗者は徹底的に蹂躙。される方は決して文句を言えない。これがキングアトラス達が元いた世界の常識である。

この点で、幻想郷は共存の究極系だと確信していた。

これが、現世の楽園。このような土地は、数多の世界を歩き、侵したキングアトラスでも知らない。よくこれで秩序が安定するものだ、と思ったくらいである。

「ほんとに良い所だ。侵略が失敗して良かった」

 

キングアトラスら、通称【帝国】と幻想郷は平和条約を結んだ。これは幻想郷をどう解釈すればいいかわからず、とりあえず国家として認識した(誰が統治者とかは決まっていない)。平和条約を結んだ上で、帝国側は、

 

1、帝国は、幻想郷への軍の派遣・駐屯を禁止する。

2、帝国は、現在幻想郷に存在する「紅竜玉神殿」に住まう者以外の帝国人の、幻想郷への干渉を、例外を除いて禁止する。

3、帝国は、今後悪竜【アジ・ダカーハ】の行動を厳重に監視する。よってアジ・ダカーハの所持権限は帝国側にあることになる。

4、帝国は、幻想郷への侵略行動を一切禁止する。

 

という内容を突き出した。ちなみに、此れを決めたのは帝国側の高官で、この暴挙に遺憾を示し、神殿の皆を長い間説教した、らしい。

 

何はともあれ、これで【炎天異変】は幕を閉じたのである。

「じゃぁ」

キングアトラスは賽銭箱から降りる。

「宴を始めるか。場所は我が神殿の境内。人を、妖を、神を、あらゆる幻想郷に生きる者を集めて盛大な物にしてやろうじゃないか」

 

 

 

 この宴から、紅竜玉神殿は幻想郷の住民となる。

そして、盛大すぎる宴のせいで紅竜玉神殿がたちまち財政難に陥ったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

東方絶天火纏、これにて終了。

「完成済小説」にでも隔離して、見やすいようにしておきます。

何時ものように、ミスがあったら(ry

ではでは。