東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

東方血濡刃 ~Human being like the Monster~

「暇ねー・・・・・・・」

レミリアは暇そうに、紅茶の入ったカップを口に運んだ。

外は吸血鬼の時間帯である夜である筈なのだが、何故か未だに忌まわしき太陽が顔を見せている。お陰で気安く外に出る事が出来ない。

この異変に、霊夢魔理沙が解決に動いているという。先程、魔理沙が異変の情報を手に入れる為にパチェと会っていた。有力な情報を得られたかどうかは定かではないが、一刻早く異変が解決して太陽が地平線の向こうに沈む事が、現在のレミリアの願いであった。

「本当に、早く解決しないかねぇ。外にも出れないわ」

「ただ今戻りました」

レミリアが更なる愚痴を吐いた直後、咲夜が扉を開けて入ってきた。咲夜には異変以外に何か面白い事があったか、買い物のついでに命令していた。帰ってきたという事は、何か面白い事があったに違いない。

「お帰り咲夜、何か面白い事が有った?」

「はい。お嬢様。紅茶の追加ですわ」

「あ、ありがと」

咲夜はテーブルの上に紅茶の追加を、コップの中に注いだ。紅茶の香りがレミリアの精神をちょっとした桃源郷へ誘う。

「人里で買い物をしていましたら、聞き慣れない事を耳に入れました」

「へぇ? 人里で?」

人里は幻想郷で、人間にとっては一番安全な場所である。巷の諸問題の原因は十中八九妖怪なので、妖怪が無暗に問題を起こせない人里では、事件らしい事件は他箇所に比べ起こりにくい。人里の人間はレミリアを怖れ避けるので、レミリア本人も面白く感じず近辺へ近寄る事は殆どない。その人里で面白い事とは珍しい。レミリアは紅茶を飲む手を止めて、咲夜の方を身体を向けた。

「何が起きたの?」

「はい、殺人未遂の事件です」

は? とレミリアは呆れた。妖怪が人を襲うのは捕食が理由だ。それによって人間が死んでしまう事はよくあるが、その被害者の殆どは外の世界から迷い込んだ外来人。人里でもまれだが、神隠しに遭ってそのまま消息不明になるケースがあると聞いている。その神隠しの原因もやはり妖怪で、それを聞いた霊夢が犯人を突き止め成敗する。これが幻想郷のルールの一つで、

と。レミリアはそこである疑問が生じた。

「・・・・・・・、人里で?」

「はい。神隠しに合った訳でもなく、人里のある密室で。稀にある怪事件だと思いませんか?」

この幻想郷で怪事件なんて毎日起きている、という言葉をレミリアは飲み込んだ。それは怪事件だ。怪事が毎日タイムセールかと思う程起きている夜の幻想郷でも、レアな一例だ。レミリアは身体を椅子から乗り出して咲夜に聞いた。

「他に情報とか無いの? 気になるわそれ」

「この怪事件はすでに三件、今日の晩から起きているようです。被害に合った人は、刃渡り一尺程のナイフで、目にも止まらぬ早さで襲ってきたといいます。おまけに、被害者はどれも女性です」

「女性ばかり狙う? ていうか刃渡り一尺って」

「30センチ位よ」

レミリアが一尺? とはてなマークを浮かべようとした時。紅魔館の頭脳であるパチュリー・ノーレッジが部屋に入ってきた。片手には魔導書、顔には読書の時に稀に使う眼鏡を掛けていた。

パチュリー様。紅茶はいかがですか?」

「大丈夫。それよりレミィ、私似たような事件を知ってるわ」

眼鏡をゆっくりと取ったパチュリーレミリアはその言葉にすぐさま反応した。

「へぇ? 流石は我が紅魔館の動かない大図書館。で? 何その事件?」

「ジャック・ザ・リッパ―。十九世紀、イギリスという国で起きた猟奇殺人事件よ」

「へえ・・・・・・・?」

レミリアパチュリーの口から出たその台詞に興味を向ける。その事件は外の世界でも閉鎖的に生きていたレミリアですら耳にした事がある事件だ。

切り裂きジャック。イギリスで起きた有名すぎる猟奇殺人事件の犯人の呼び名である。

十九世紀、惨殺する事件が二カ月に亘って発生した。ジャックは少なくとも五人、女性ばかりを狙って殺人を行ったばかりではなく、殺人予告等を警察署に送った事から劇場型犯罪の元祖ともされている。この事件は未解決であり、加害者の候補は幾つか挙がったもののどれも逮捕には至らず、ある時点からバッタリと事件が起きなくなり時効となった。

「だけど、襲われた人間は誰も死んでないらしいよ? 猟奇殺人の何でもない」

「まぁ確かにそうだけど。女性ばかり狙ってるという点では一緒よ?」

「私は外の世界のその事件を存じませんから何とも言えません。確認の為、もう一度人里へ参りましょうか?」

咲夜が調査に向かおうか、と主人に意見を出す。パチュリー咲夜の視線に合わせた後、レミリアの方を向いて返答を待った。レミリアは、紅茶を一気に飲み干して意外な命令を下した。

 

「私も探索に行くわ! 咲夜、外出の準備をして」

 

「はい?」

レミリアの口から出てきたその言葉に、パチュリーは驚愕した。親友であるレミリアの無邪気な笑顔が馬鹿ばかしく見える程に。

「ちょっとレミィ、そんな無茶止めた方が「分かりました、すぐご用意致します」、ちょっと咲夜まで!?」

「大丈夫よパチェ、太陽は地平線のすぐ上だし、日傘と日焼け止めクリームを塗っておけば」

レミリアは自信がたっぷり籠った笑顔でパチュリーを見る。パチュリーはそれが太陽より眩しく思えた。馬鹿馬鹿しい程度に。

「けれど、長い間外に居ては

「無駄ですパチュリー様。こうなったお嬢様は人でも妖怪でも止められません」

咲夜も笑顔でパチュリーを見てそう言い、紅茶を片付け消える。時間を止めて片付けと準備に動いたのだろう。

「じゃあ、そうゆう事でパチェ。貴女も行く?」

「止めておくわ・・・・・・・、髪と本が痛むから」

パチェは諦めたと大きく溜息をついた。その時、レミリアは既に自分の周りで出来る限りの準備をし始めていた。珍しくやる気満々ね、とパチュリーは思いながらレミリアの作業を見ている時に、パチュリーレミリアが片づけた一冊の本に視線がいく。

『シャーロックホームズ:最後の謎』

パチュリーはそれを見て、レミリアが行動しようとした理由を何と無く理解する。レミィも見た目に違わず結構影響されるのだな、という個人的な感想を置いて、パチュリーレミリアの部屋から退室した。

 

 

 

「人里には誰も居ないわね」

「はい、例の通り魔に襲われる可能性も否定できないからだそうです」

レミリア咲夜は辺りを見渡してみる。空は夕暮れの色だが、地上には誰も居らず、人間どころか猫すら通っていない。

「通り魔ねぇ。全くその通りな表現だと思うけど」

「しかし、ジャック? は密室にすら侵入したと聞いています」

「昔の人間がまだ生きてるとも思えないしねぇ。妖怪か幽霊にでもなったかな」

レミリアは日傘をさしながら、道の真ん中を我が物顔で歩き出した。咲夜はその斜め後ろをぴったりとついてくる。

「何か目撃情報みたいの無いの? その方がずっと探しやすいわ」

「残念ながら、姿も影も見た人は居ないらしいです」

「そう・・・・・・・、怪我人ですら姿も何も見た事ないの」

「はい。いわゆる完全犯罪ってやつですね」

レミリアははぁ、と溜息をついた。証拠が無くては犯人を特定出来ない(といっても出来そうな連中は数えきれる程に居るのだが)。犯人探しも何も出来ないのではつまらないとレミリアは思う。

「とはいえ、動かなくては何も分かりませんし起こりません。とりあえず進んでみましょう」

咲夜がそう進言したので、レミリアは不貞腐れながらも咲夜を横に、一緒に歩き出す。太陽の光が斜めに入って来るので、日傘ではとてもではないが防ぎきれない。日焼け止めを塗っているとはいえ、忌まわしい太陽の光が自分の身体を焼いているのを良い事とは感じない。

咲夜ぁ、でもどうするのよ。完全犯罪なら犯人探しもほぼ無謀よ。やれそうな奴なら幾らでもいるけど」

「まぁ、人通りが全くないこの場所です。犯人が一日や二日で何人も襲ったという事は、今も誰かを狙っているかもしれません。そうすれば私達を狙う可能性も否定できません、其処を捕えます」

「・・・・・・・・、まぁ咲夜なら捕まえれると思うけど。貴女はどう思う? そこの私達をつけてるお前」

レミリアはゆっくりと後ろを振り向く。咲夜もそれに合わせてレミリアの視界の邪魔にならないように移動しながら背後に忍び寄る人を確認した。

・・・・・・・黒ずんだ赤色をしたロングジャケットを着た少女だ。

長い髪も赤色で、腰くらいまで伸びている髪を先端に近い方で止めている。だが、一番目を惹くのは異様な雰囲気を醸し出すその外装ではない。

右手に持つのは銀製かと思わられる一尺はありそうなナイフ。片刃のナイフは鉄でも簡単に切断出来るのではないかと思える程の名品だと感じられる。それが太陽の光を反射して、少女の顔がよく見えない。

「お前が今回の諸事件の犯人か? 自分からノコノコ現れるとは間抜けな奴だな」

レミリアはカリスマがこもった目で犯人と思われる者を睨む。太陽の光は直接受けるから吸血鬼にとって毒だが、造り出された光や反射される光は毒でも何でもない。レミリアは目を凝らして相手の顔を確認しようとするが、反射が強く確認が難しい。

「お嬢様。お下がりください、銀製のナイフはお嬢様に有害です。私が対処します」

「大丈夫よ。人間相手に遅れを取る私では

 

ドンッ!!

 

レミリアがそう言い切ろうとした瞬間、相対していた少女が十間(一間が大体180センチ位)の間合いを大きな踏み込み音と共に一気に詰め、銀製の大型ナイフをレミリアの華奢な首を狙って振るった。

・・・・・・・・、中々早いな」

レミリアは余裕の表情で、身体を反らして先数寸の間合いで回避してみせる。瞬間太陽の光がレミリアの身体に当たるが、多少当たって焦げる程レミリアの身体は柔ではない。レミリアは日傘を捨てて小さな身体をねじり、少女の首を刈る勢いで腕を振るった。少女は銀製のナイフの腹で、その重い一撃を受け止める。

「ッッッ!!!」

想像を遥かに超える衝撃を受けて、少女の顔が真顔から驚愕の表情へ変化する。レミリアは少女の華奢の身体で、自分の一撃を受け止めれたのに驚いた。

「人間の癖して中々・・・・・・・だが刃を立てないのか。甘いんだな」

今の一撃が見えたのなら、刃をレミリアの拳の方を向けてダメージを誘うべきだった。そうなっていたら即座に手を引くつもりだったが、少女はそうはしなかった。これまで通り魔事件を起こした者とは思えない。

少女は再び刃を向ける。銀製の一尺ナイフを振り翳し、レミリアの腹部を狙ってナイフを振う。レミリアはそれを子供だましのように、次々と紙一重でかわしていく。少女のナイフを振うスピードは相当なものだが、吸血鬼のレミリアは天狗に勝るとも劣らない俊足である。人間なのかどうかは知らないが、レミリアとの体感速度が桁違いである。少女にとっては必殺の一撃でも、レミリアにとっては蚊の移動速度と大して変わらないように感じている。そうそう当たる筈がない。

レミリア咲夜を片手で制しつつ、少女の斬撃をスルリスルリと回避していく。それが三十秒続き、少女の息が切れてくる。

「体力もそこらへんの人間とさして変わらないのだな。面白い奴だと思ったが」

レミリアは遅くなっていく斬撃の手を直接受け止め、そのまま少女の耳元にまで顔を引きつけた。

 

「その血を一滴残らず飲ませてもらうぞ?」

 

大きな殺意と共に、レミリアは口を開く。吸血鬼特有の鋭い犬歯が垣間見え、少女の大動脈を狙って歯を立てようとする。大きすぎる殺意を感じた少女は残る力を振り絞ってレミリアの吸血行為から脱し、そのままレミリアの胸を狙って最後の力を振り絞った突き攻撃を繰り出した。レミリアはその攻撃を、ナイフを持つ手の上を抑える事で最後の一撃を制した。

「ッ!?」

少女の表情が再び驚愕で染まる。自分の斬撃を紙一重で避けるだけでなく、突きを受け止めてきたのだ。少女が驚愕しない筈がない。

少女は掴まれた手を解いて、一旦間合いを取ろうとする。

咲夜

「はい」

瞬間的に姿が消える吸血鬼の従者。少女の目は再び驚愕の色で染まる、よりも前に咲夜が少女の背後に出現し、少女を拘束した。

その時間、十間の間合いを瞬間で詰めた少女が反応出来ない程の刹那的。

「ッ!」

少女は逃げ出そうとするも、咲夜の拘束からは逃げ出せそうにない。だが少女は必至の抵抗を続ける。レミリアは日傘を拾って太陽光による汗を拭い、少女の顔を自分より背の高い少女の顔を覗く。少女の目は全てを観察しているかのように鋭いが、顔にはまだまだ幼さが残っている。レミリアは顔を覗きながら感想を共に問いを投げかけた。

「お前が人里で噂だった切り裂きジャックか。いや、本当に切り裂きジャックなのか?」

「・・・・・・・・・」

黙秘を貫く少女。レミリアはこの少女に対し少し興味が沸いたため、日傘を翻して東の方角を見た。

咲夜、こいつが外来人なのか分からないし暇だから、博麗神社に行くわよ」は

それを聞いた咲夜は、拘束している少女を見た。背の高さは殆ど一緒である。

「この人はどうしますか? 連行しますか?」

「そうするわ。名前を言いたくないなら別に良いけど、突然人里を襲った通り魔ならずっと以前から事件を起こしている筈。こいつが外来人である可能性は十分に高いわ」

「鋭い推察です。ですが、殆ど興味を示さない人里の為に動くとはお嬢様、何か悪い物を食べましたか?」

「食べる物は全部貴女が出してると思うけどね・・・・・・・・・、そいつに興味が少し沸いたから。人里の人間の為じゃないわ」

「そうですか。少し位人里の人間に心を開いてみても良いと私は思います、お買いものの時に何時もお世話になっているので」

「人里の人間は私を怖がるし、日中は暑いから出たくないし、元から興味が沸かないから無理な話ね」

「分かりました。では早速神社に行きましょう。魔理沙は兎も角、霊夢が居ると良いですが」

レミリアと少女を拘束した咲夜は、幻想郷の東、博麗神社に向かって飛翔した。レミリアは日差しが極力自分の身体に当たらないように日傘をさしながら、咲夜は少女を拘束しながらなので少し難しい体勢のまま。少女は飛行が出来ない為、自分と少女ぶん咲夜には苦がある。だが完全で瀟洒な従者は文句の一言も言わず、レミリアにぴったりと付いてくるように博麗神社に向かった。

 

 

 

 

 

血濡刃。白昼夜中に、というか妖怪の山の頂上よりも高い位置で起きている弾幕ごっこの時に、レミリア咲夜が行動を起こす。聞いたのは、人里で次々と発生する通り魔事件だった。紅魔館の主と完全で瀟洒な従者は、その正体を探るべく明るい夜の人里に降り立った。

さっとした概要は、こんなもんでしょうか。

なんでこんなんをいきなり始めるんだというと、これが白昼夜でも関係する『かも』しれないからです。ちなみに白昼夜は打ち切りでも何でも御座いません。

あ、あと定期更新は勿論復活で御座います。白昼夜。勿論血濡刃の続きらしいのも、白昼夜のタイミングを考えつつ更新します。

ではこのへんで。グッナイ。