東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

日喰異変 ~東方陽蝕昼~ Ⅰ

「まぁ、何処に行くかな。やっぱりこーゆー異変になると、紅魔館の方に寄る方が良いか」

この異変。昼にも関わらず太陽の光が地上を照らさない。正しく言うならば、「太陽の光が喰われた」異変だ。以前レミリア達が起こした異変は、深い霧によって太陽の光を遮断するというもの。それとは別のベクトルだ。

だが、このような太陽や空に浮かぶ紅い月となると、やはり紅魔館の方に出向いた方が良いだろう。他にアテがある訳でもないし。

そう考え、紅魔館に堂々と入って見る事にした。

 

「お前が来る前に、霊夢が来たわ」

玉座に座って、呆れたように言ったレミリア

「もう、二度手間になるから一度に来てほしいもんだよ」

「別に謝らないぜ、私はテレパシーは使えないんだ。私の用件は何だかわかるか?」

「太陽でしょ」

レミリアは窓から空を見る。本来ならこの時間には、眩い太陽が地上へ光を注いでいる筈である。だが、その輝かしい太陽はその姿を真っ黒に変え、空には代わりと言って良い程堂々と、紅い月がその顔を見せている。

「太陽自体が食べられているように見えるこの現象。異変としか思えないだろ?」

「他の奴が起こす異変なんて知らないねぇ」

レミリアはグラスに注がれたワインを眺め、匂いを嗅ぎ、それを飲んだ。ワインの匂いが、部屋全体に充満する。

「本当かよ。白を切ったような態度だな」

「本当よ。分からなくもないけど、予想の範疇を出ないしね。あんたも此処に居座らずにさっさと他の所に寄って情報収集に励みなさい」

「ちぇっ。パチュリーは何処だ?」

「今は用事が有るわ。勝手に会ったりしたら殺すわよ」

はいはい、と魔理沙は、部屋を後にする事に決めた。此処では大した情報は得られないと判断したのだろう。適当な窓から、箒に跨って空を飛んで行った。その姿は、レミリアが座るこの部屋からでも伺えた。

「レミィ・・・・・・・・、図書館でこんな本が見つかったわ」

ほぼ魔理沙と入れ違いで入室してきたのはパチュリー・ノ―レッジ。その右手には一冊の本を持っていた。紅魔館の頭脳とも言って過言ではない程、あらゆる知識を備えている。

「お、パチェ。何が見つかったの?」

「レミィのほぼ予想通り。図書館でこの本が見つかった事自体驚きだけど」

レミリアが見えるように、持ってきた一冊の本を開く。その中には英語らしい文字と、走り書きのような絵が載っていた。

「やっぱり在ったのね」

「えぇ、この本の通りなら、やっぱりレミィの想像通りの相手が」

本の中には在った絵。串刺しにされて叫んでいる人間と、黒く塗りつぶされた太陽。一人の翼と角を持つ悪魔らしい者が、ワインを片手にその光景を楽しんでいる。

「ったく、同族がこんな事をしてるとは俄かに信じがたいけど」

「どうするの?」

レミリアがはぁ、と溜息をついているのを見ながら、パチュリーは質問した。レミリアは少し考えた後、持つグラスをテーブルの上に置く。

「ちょっと会って説教しなきゃね。咲夜

「お呼びでしょうか」

レミリアが柏手を打つと同時に、虚空から十六夜咲夜が出現した。何処かで盗み聞きしていたのだろうか、と思える程の刹那的な早さでの登場である。

「出かけるわ。出発の準備をして」

「お嬢様が行かずとも、私が参りますが?」

「良いわ。同じ吸血鬼として、一言ガツンと言っておかないとね。咲夜はパチェと一緒に、此処に残ってて。この前捕まえた殺人鬼の監視もお願い」

「かしこまりました」

またも、刹那的な早さで消滅した咲夜。時を操る咲夜なら、外出の準備は直ぐに終わるだろう。そうレミリアが考えているタイミングで、

「お姉さま! 魔理沙は何処!?」

部屋の扉を勢い良く開いて入ってきたのはフランドール・スカーレットだ。何処からか魔理沙が侵入した事に気付いたらしい。

魔理沙はもう帰らせたわ。ちょうど良い、フランも外に出る支度をして」

「お出かけ!? やったぁ!!」

入ってきて五秒で飛び出すフラン。余程外に出るのが嬉しかったのだろう。フランが外に出る機会はあまり無い。更に、姉のレミリアだけなら、宴を含めても殆ど無い筈だ。

「吸血鬼の王。文書ではそうなってるけど、レミィはその人知ってるの?」

「いや全然。面識も何もないわ多分。顔も知らんし」

レミリアは部屋の扉を目指して歩き出した。パチュリーはその背中を見送りながら、手に持つ本を再び開く。

先程とは違うページ。血飛沫と断末魔を上げて絶命する人間達。このページにも、翼と角を持つ一人の悪魔が描かれていた。

「まぁ、何とかなるさ。直接会って帰るだけだし」

「そう。じゃあ気を付けて。仮に太陽が出だしたら適当な日陰で待っとくのよ」

「はいはい。そんな事無いとは思うけど」

レミリアはそう言い残して、部屋を後にした。支度は咲夜がしている筈、レミィは一体何をしに行ったのだろうとパチュリーは思いながら、もう一度本をめくった。

その巻末。一番最後のページに、高々と笑う悪魔と、一つのサインが残っていた。

 

ブローディ、と。