東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

日喰異変 ~東方陽蝕昼~ Ⅸ

大きな炸裂音が城内で木霊する。

一つ目の爆発で花壇は吹き飛び、二つ目の爆発で窓ガラスは割れ、三つ目の爆発で壁天上にヒビが入る。長い間続ければ、城の崩壊の恐れも出てくるだろう。

 

天罰『スターオブダビデ』!」

 

レミリアがドラクレイの弾幕を避けながら、スペルカードを宣言。レミリアの周りに小さな魔法陣が展開され、丸い弾丸とリング状の弾幕が張られる。中でも存在感があるのは六芒星と見紛うであろうレーザー。ドラクレイを撃墜せんと広い廊下全体に放出される。レーザーは床の高級なカーペットを焼き、壁の装飾を爛れさせる。

ドラクレイは自身に当たるであろう弾丸を予測し避ける。避けるのが難しいのであれば持つ剣で切り伏せる。故に、ドラクレイには一撃すらも当たるどころか、掠りもしなかった。

元々広いこの城だ。広い城に用意されている廊下の大きさも、馬鹿にならない広い。弾幕ごっこに全く困らない程の広さである。弾幕ごっこを行って金銭的な損害を受けるのは一方的に城側の方だが。

「こんなものでは掠りもしないぞ!」

ドラクレイがレミリアに挑発する。だがレミリアも、見た目こそ幼いが中身は結構まともだ。簡単に挑発に乗るような我儘お嬢様では、

「言ってくれるわね人間ッ!」

我儘お嬢様だった。レミリア弾幕に込める力を強め、密度を上げていく。ドラクレイはそれを、剣を振るう数を増やす事で対応していく。『スターオブダビデ』での均衡がその後一分続き、ドラクレイは次の手段をうった。

 

「十字『反逆者への磔刑』!」

 

十字の形をしたレーザー状の弾幕レミリアを襲う。レミリアは『スターオブダビデ』で相殺させるが、悪魔の弾幕は十字に対しては分が悪いのだろう。劣勢と見たレミリアは『スターオブダビデ』に込める力をカットして弾幕を解除し、挑発で上った頭を冷やしながら弾幕の回避に専念する事にした。

・・・・・・・・ドラクレイの名前は、かつて外の世界に存在していた『ドラゴン騎士団』、ドラクルに由来する。これは国家の王室と十字架を守り、それに仇成す政敵と異端者を討伐する事を使命とされた名高い騎士団である。ドラクレイはこれに最初に所属していた、歴史の中で抹消された22人目の団員だった。名士が揃う『ドラゴン騎士団』の中でも、女性で幼いながら特筆した実力を持っていたが、騎士団没落の後、ある虐殺事件の対処に派遣され、圧倒的な力を持つ吸血鬼を前に騎士団は全滅。唯一生き残ったドラクレイは吸血鬼に気に入られ、吸血鬼の血を受け入れ、今に至る。

ドラゴン騎士団』にて最高峰の力を持っていた彼女の剣術は、国家の中でも五指に入るものだっただろう。その剣に使用されているのは銀。城内で同族以外に吸血鬼を討てるであろう実力を持つ、数少ない近衛兵である。

だが、そのドラクレイも内心では冷や汗をかいていた。

「(流石は五名家のスカーレット、半端な吸血鬼とは比べ物にならない力を持っている。それなのにまだ500年程度しか生きていないだと? 成長したらどれだけ強くなるんだ!?)」

吸血鬼も実は、叩けば埃の如く出てくる程度存在する。だが埃のように出てきた吸血鬼なら、ドラクレイの相手ではない。しかし、多数居る吸血鬼の中でも圧倒的な力を持つ『五名家』が相手となるとドラクレイも冷静に対処せざるを得ない。

『五名家』とは、吸血鬼の始祖である『ブローディ家』とそれから派生した四つの吸血鬼家の事である。そのうち一つは末代に至るまで滅亡し、一つは行方不明だが、三つの名家は今だ存在している。

吸血鬼始祖血統の中央家系、ブローディ。

破壊と運命を司る北の家系、スカーレット。

短命と歴史を司る西の家系、ルビーレッド。

これらは元々一つの家系であったが、それが四方と中央に分裂した。それらを間接的ながら統率していたのはブローディ家である。現在ドラクレイが忠誠を誓っている家系もこれだ。この五名家の中でもスカーレット家は、破壊と運命を操る能力を持って生まれる吸血鬼が度々生まれる家系で、五名家の中でも高い戦闘能力を持つ。五名家の中でも、単独の戦闘能力はトップクラスと言って過言ではない。故にドラクレイがレミリアとの均衡を保てるのは奇跡としか言いようがない。本来なら吸血鬼とその眷族では力の差は歴然。一瞬で蹴散らされても可笑しく無かった。

「(このお嬢様の実力を見極め、スぺアルに伝えなくては)」

ドラクレイはレミリアの更なる力を図るべく、次の手段に打って出る。『反逆者への磔刑』は当たれば吸血鬼相手でも高いダメージを与えれるだろうが、回避率の高いレミリア相手では分が悪いのだろう。ドラクレイは弾幕を解除し、新しい弾幕を展開しようとする。

だが、レミリアの方が早く動いた。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』・・・・・・・・・・・!!」

 

顕現する紅い槍。北欧神話にて主神オーディンが持つ神槍を思わせるそれは、穿てば確実に相手を貫く。レミリアはそれを敢えて投擲せず、突撃と共にドラクレイを貫かんべく猛ダッシュした。そのスピードたるや神速と言っても過言ではないだろう。風や音すら置いていきドラクレイの胸元を穿たんとする。

「、させるかッッッ!!!」

ドラクレイは持つ剣で必死に捌く。貫く槍は止めたが、レミリアグングニルは健在だ。レミリアは槍を振るい、ドラクレイは剣を振るう。五合打ち合った後、レミリアが少しだけ体勢を崩したのを見、ドラクレイは反撃の機会と直感し新しいスペルカードを接近状態で宣言した。

「ここで討つ! 呪剣『四度目に与える死』!!」

ドラクレイが持つ剣の柄に黄金が、刀身に赤い光が宿る。北欧神話にて神族の血を引く王すらも呪い殺した魔剣『ティルフィング』を模したスペルカードである。本来なら横に薙いで高速の弾幕を放つが、吸血鬼相手ならそれを考える事は無い。ドラクレイは剣を振るってレミリアを一刀両断せんとする。

 

だがその考えは、レミリアが穿った槍により打ち破られた。

 

「ごふっ・・・・・・・・・!?」

レミリアが穿ったグングニルは、ドラクレイの胸元を一撃で貫いていた。ドラクレイは剣を床に落とし、倒れこむ。肩で息をしているが、命にはなんら別状は無いだろう。

「これが人間と私達の根本的な能力値の差ね。さっさとお前の主人の居場所を吐きなさい」

レミリアは肩やらドレスに付着したホコリを払い落しながらドラクレイに歩み寄った。ドラクレイはレミリアを見上げる。下から見るその吸血鬼は、幼いながら微かに王威すらも感じた。幼いくせに。

「何かすごく失礼な事考えられたと思うんだけど」

「気のせいだ。私は負けた、か」

ドラクレイは鎧ごと貫かれた胸元を一見。ベースが人間といえど、今は吸血鬼の血を受け入れ化生の一角となっている。大量出血こそしているが胸を貫かれた程度では死ぬに死ねない。三日もすれば再生するだろう。

「大公閣下はこの城の四階に居られる。謁見をするならば四階の謁見の間を通れ」

「四階ね? ならすぐ上じゃない。分かったわ」

レミリアはさっき階段あったじゃないか、と意気揚々としながらその場を去る。レミリアの足音すらも聞こえなくなったこの場に残されたのはドラクレイ一人。

「だが、レミリア嬢の強さは大体把握した。スぺアルにも伝わっただろうし・・・・・・・・・・、もっとも、あの力では大公閣下をあしらうのは難しいだろう」

ドラクレイは小さな笑いをこぼす。そして、今だ沈む見込みの無い、紅く染め上がった満月を見上げるのだった。待つのは救助と決着だけである。