東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

不沈の魔王に挑む、億千の世界を渡る者。


(id:kobahaya15)さんのオリキャラである「八十島 介渡」とのクロスオーバー作品です。読み応えのある小説がありますので、是非読んでみては如何でしょう?

私はすっかりファンで御座いますよ?

では本編どうぞ。

 

 

 

 

 

 

「でわでわ、実況は私リルア、解説はリヴェンでお送り致します」

「多分仕事しないが、任せたまえ」

「仕事しない宣言した奴に任せてたまるものですかって。さぁ今日神殿の境内で始まったのは、介渡と白夜の一騎打ち! さぁどうなるでしょー?」

「酒の肴にはなるかね。さっさと始めろ馬鹿共」

紅竜玉神殿、大神木の麓。そこでは一人と一柱が対峙していた。

一人は、億千万の世界を渡った自称清楚純粋紳士、八十島 介渡。

一柱は、不沈の神霊として暴れ回った魔王、華翠玉 白夜。

互いに一歩も動かず、相手の動きを伺っている。

「今回の喧嘩はどうなるでしょー? リヴェンはどう思う?」

「初めての喧嘩だからな。でも互いの事は大体分かってるから、いい戦いになるんじゃね?」

と言いながら酒を呑むリヴェン。本当に解説する気があるのかが疑問である。

さて、このような事態になったのは、ちょうど二分前の紅竜玉神殿での事。

 

「あぁこれ以上私はお前の言い草を我慢出来ないッ! 勝負だ白夜ッッ!!」

「気が合うわね、私もウンザリしてきた頃よ。そろそろボコして背を縮ませてやろうと思ってた所! その喧嘩買ったッッ!!」

 

以上。一で始まって十で終わる訳が無い。普段からお互いに色々ふざけ合った結果に殴り合いに発展してしまったのである。

傍観者であるリルア・オムニポテント・ヘルヴェルとリヴェン・キングアトラスは、何処からか審判席まで用意した位である。更に酒も用意。解説実況をする気なのか酒の肴にするつもりなのかが不明だ。ただ見る、という事だけは確実に分かる。

「リヴェンはどっちが勝つと思う? 勝つ方に何か賭ける?」

「賭けねぇよ。この勝負自体は、ドングリの背比べじゃね?」

コポコポと杯に酒を注ぐリヴェン。リルアはその動きを見て、自身の杯をリヴェンに渡した。リヴェンは苦々しい顔をしながらも、リルアの杯に酒を注いでいく。

「介渡の本気火力なら、白夜を押し切れない事は無い。白夜の力があれば、介渡の構成物質カルビンを破壊する事は不可能じゃない。どっちが手際良くボコせるかがカギだな」

「白夜の干渉支配を突破出来るの? あの変態紳士が」

「今の白夜は弱い。超どころかスペシャルな位雑魚い。介渡が白夜の能力の構造を理解さえすれば、押し切れる筈だ」

リヴェンははっきりと断言する。だが、恐らく介渡は白夜の能力の真髄と、数少ない弱点を把握していないだろう。無知の状態で不沈の魔王に立ち向かえば最後、一日二十四時間三百六十五日白夜の奴隷として永久的に働かされてしまう。

「白夜も介渡の能力を舐めまくっている。介渡の能力に真に強い部分を、白夜も理解出来てないだろうな」

「お互いに十分の勝率があると。私は、武神の白夜の方が優位に見えるけど」

「おいおい、介渡は神霊級相手でも技術と経験で互角に戦ったんだからな。武神ってだけで白夜優位! って断言するのはよくねぇぞ」

「さてさて、かれこれ五分程対峙しています! 早く戦え! 小心者!!」

リルアが実況の癖にブーイングを始める。右手で親指を下に向けたグットサイン。更に「ぶーぶー」と豚の声真似を始める始末である。それを見たリヴェンは腹を抱えてリルアを指差し大爆笑。だが杯に注がれている酒は全く零れない。駄神筆頭であるリヴェンも、酒だけは大切に扱っているようである。宴の神霊と呼ばれ信仰を集めている名は伊達では無い。

「あーもう五月蠅い! 黙っときなさいよリルア!!」

リルアの声真似に我慢できなくなった白夜が、審判席に向かって抗議する。

「審判の私に抗議するとは言語道断! 強制敗北したいのかい?」

「審判じゃないでしょ! あんた実況って今さっき言ったでしょ!」

そもそも、審判席に座るのは審判だ。実況と解説が座るものではない。逆に、実況と解説が座るのは実況席の筈だ。お前が主張するそれは審判席では無いと白夜は訴えたが、リルアは耳を両手で塞いで無視。

・・・・・・・・・・・・・・白夜と対峙する介渡は、この隙を見逃さなかった。いや、凡人でもこのタイミングは隙だらけだと思うだろうが。

 

――――――刹那に穿たれる、カルビン100%の槍。

 

カルビンとは何所ぞやの研究チームの研究結果曰く、「世界で最強の硬度を持つ物質」。物質界では現時点では、比類の無い堅さを持つ。それで出来た槍であれば、万物を貫く「最強の矛」と言っても過言ではない。

介渡が穿った槍は地面を抉り、空気の壁を突き破り、瞬きよりも早く白夜の胸元に接近する。白夜は全く反応していない。強襲にして必殺の槍は、白夜の胸元を貫通し辺りに表現出来ない程の血飛沫が飛び散r

 

「と、思った?」

 

ゴン、と鈍い音が響き渡る。

「何?」

介渡は愕然する。それもそのはず、必勝の機会と見て投擲した槍が、本来貫通する筈の白夜の胸元に当たるや否や「ゴン」と鈍い音を出し、まるでゴムボールを壁に当てたかのように跳ね返ったのだ。純カルビンの槍は白夜の足元に落ちる。

「早速発動しました! 白夜が最強の戦女神と言われる所以、『干渉の支配』!」

「介渡はこの能力をどう解明するだろうな。そこんとこ注目だぞ」

「ルーキー殺しと名高いこの力! 対戦者の悉くを屠ってきた帝国最強の盾! 介渡はどう打ち破るでしょうか!?」

白熱しているような実況をするリルア。実況っぽく、何処からか出てきたマイクまで所持している。審判をする気は毛頭失せたようだ。良かった。

白夜は介渡の投げた槍を持ち上げ、いとも簡単に振り回す。駄神といえど白夜は武神。あらゆる武具の使い方には慣れている。

「こんな可愛い私にこんな物騒な物をぶん投げてきたとか。信じられない」

「可愛いのは確かだが白夜にそれを投げても問題無いと思ったからね」

介渡は冗談混じりの事を言いながら静かに、改めて臨戦態勢を取る。白夜に何か物を持たせては危ない。それをどう使って問題を引き起こすか想像も出来ない。白夜は背丈こそ高いが、考える事は餓鬼と言っても過言ではないだろう。

白夜はゆっくりと槍の柄を持った。何かやる気満々である。

「私何か悪い事言われた気がする、な!!」

 

穿たれ返されるカルビン100%の槍。

 

「うわぉっ!!」

介渡は反射神経だけで飛んできた物体を避ける。音の壁すら貫いたそれを避けれたのは、4000年の人生が活きたからだろう。介渡が避けた槍は大地を抉り、深い森林の向こうまで飛んでいく。野生の妖怪や妖精が巻き込まれたかもしれないが、生命力が黒光る台所の天敵のように強い彼らなら大丈夫だろう。

「ちなみに、神殿の周囲には結界を張ってるから、幻想郷に影響は一切有りませんよ?」

「周囲の環境は気にしているという事だな。そこは合格点をやれるわ」

冷静に一言ずつ入れるリルアとリヴェン。結界までの距離は問題でないと考える二人の思考が恐ろしい。

「こんなんじゃ駄目か、なら!」

介渡は右手を白夜に向けた。指先が硬化し、膨れ上がったと思うとそれが突如爆発。カルビンの散弾は辺りを蜂の巣にしながら、白夜に向かって発射された。散弾は樹木すらも貫く威力、名無し程度の妖怪が受ければ昇天は必至だろう。白夜はその散弾が放たれた事を一瞬で確認するなり、

「一緒よ一緒」

無防備に立ち尽くす白夜。散弾は無残にも白夜に直撃していくが、その全ては先程の槍と同じく、白夜に触れるや否や散弾の弾速を考えれば有りえない勢いで跳ね返り、周囲に落ちていく。

「生半可な攻撃では私に傷付ける事も出来ないわよ?」

「別に傷付けようとも思ってないけd

「お・ち・び・さ・ん☆」

「よっしゃその喧嘩買った」

白夜の挑発で、介渡の戦闘本能が盛大に燃え上がった。それはもう山火事かと思う位に。

戦闘本能が着火した介渡であるが、頭の中では冷静でいた。4000年の生涯は伊達でも飾りでも何でもない。腹立つ白夜を一度ボコしてやる事には変わりないが、白夜の能力により攻撃は防がれてしまう。このままではジリ貧だと考えを巡らす。

だが、圧倒的な情報不足だ。白夜の能力の弱点が突ける程の知識が介渡には無い。4000年生きてきた人生でも、ここまで変異的でチートな能力に出逢った事は指で数えれる程度しかない。

「どうやら介渡は白夜の攻略に悩んでるみたいですねー。どう思います? 実況の駄神筆頭」

「このままでは勝負にすらならねぇな。ヒントの一つでもやらんにゃ肴にもならん」

つーか今駄神筆頭って言ったかコラ、とリヴェンは続けようとする。だがリルアは無視して実況を続けた。

「白夜の能力は『干渉を支配する』です! 干渉とは仮定される事象A、Bが接触し何らかの事象Cが発生する事。即ち、この能力は一方からの攻撃に関しては何に関しても無敵という事! 故に、白夜はどう攻略すれば良い?」

「一方ってそんな曖昧なヒントをくれても、」

介渡はリルアがくれた適当なヒントを復唱し、何か不自然な所は無いかと探る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・、一方?

介渡の中に一つの仮説が立てられた。

「(ならこれを、どうにかして実証しなくては)」

介渡は表情には出ないよう、頭の中でその仮設を立証させる為の戦法の考える。だが白夜は、介渡に考える程の時間を与えはしなかった。

「さぁ・・・・・・・・・・・・・・・・、介渡にはこれでお仕置きしなきゃね」

白夜が不自然で怪しい笑みを浮かばせながら、小さな魔法陣を展開。距離の壁に干渉し、魔法陣から一つのピコピコハンマーを取り出した。先端部分には愛らしい兎のようなマスコットキャラクターの人形が孤立している。

「何だそれ?」

表情には出ない様に、作戦を練る介渡。手段だけは思い付いたが、これを実行する為の駒が幾分か足りない。駒を増やす為に周囲を弄っている最中だ。

「あれは!!」

元審判席、現実況席に座るリルアがわざとらしく立ち上がった。それは三文芝居も良い所だと言える位下手。立ち上がった拍子で椅子が転がる。リヴェンはそれを見て溜息をしながら椅子を元に戻す。リルアはそれを冷静に見て椅子が元の状態に戻ったのを確認してから、再び実況の仕事に戻った。

「あれは、東西南北で名高い神霊『チッサクスルノ・ダイスキヨ』が三分で作り出した名鎚! 『これで貴方も短足よ☆』!」

当然、そんな神霊もそんな武器も存在しない。神話にも残っていない。帝国がある『向こう側の世界』では、子どもたちの大好きな食べ物ランキングでミートボールの次に有名なものだ。有名なのかどうかも正直良く分からないが。そもそも比較するものを間違えている。

「この武器は・・・・・・・・・・・・、叩いた相手の背を、あらゆる力を無視して10センチ程度小さくする能力を持ってるわ」

「へぇ? 背を小さくする」

背を小さくするのなら、介渡と白夜の背が同じか、白夜が介渡を見上げる状態にするのも可能であろう。介渡はひっそりとそれを手に入れる事を自分の予定帳に記録した。

「でも単純に小さくするものではないわ。女性に対して使えばロリ化していくだけだけど、男性に使えば、その人の足の長さだけを縮め、戦闘出来得る機動力を奪う」

『これで貴方も短足よ☆』は、元々機動力に富む、ある男の神霊の機動力を奪う為に、カップラーメンを作ると同時に開発された武器だ。対男性に特化されたそれは、叩けば叩く程相対者の機動力と尊厳を奪うだろう。

「そんな武器、あっていいものなのか」

介渡は問いつつ、全ての準備を完了させる。仮説を実証した時の追撃も準備万端だ。逆にこの仮説が外れであれば、介渡が任天〇のキャラクター、キノ〇オと同じような体型になる事となる。それだけは何としてでも避けねば。

「所有権は私にあるからね? 私が良いって言ったんだから良い」

ちなみに、この効力は所持者の私が全決定権があるからね? と白夜は付け足した。これを好機とみた介渡。白夜はこれから介渡が何か仕出かすであろうという事を予想すらもしていないだろう。

「そうか」

介渡は指をパチン、と鳴らした。その音を待っていたかの如く、地面から何かが形成されていく。それも一つや二つという数でなく、軽く五十はあるだろう。それらは最初は岩石のように歪だったが、次第に形が整っていく。

「「うわ」」

リヴェンとリルアが同時に、嫌悪感を感じさせる声を漏らした。それもそのはずであろう。それらはやがて、介渡と同じ物となったからだ。物なのか者なのかは判断しにくい所である。それら一つ一つはとても精巧であり、一瞥しただけでは本物かどうか見分けがつかない。唯一の違いといえば、その瞳に光が灯っていないという事位だろう。

「数を増やして戦おうっての? 群になったって勝ち目は無いわよ」

「数を増やして戦うつもりだが、群になって戦う気は微塵も無い」

介渡は再び、指先を白夜の方向に向けた。先程と同じ攻撃である、指先を破裂させ、その散弾で攻撃するつもりなのだろう。その動きを、介渡モドキ約五十体が同時に行った。

「お? 気付いたか介渡。白夜の弱点を」

リヴェンが腕を組んで感心、すると同時に介渡の指先、及び介渡モドキ約五十体の指先が破裂した。その散弾は地面を抉り、白夜を強襲する。

「っ!!」

白夜はかがむと同時に地面に手を触れる。大地が白夜の命によって脈動したかのようにドクン、と音を出し、次の瞬間には白夜の周りに結界が展開された。大地の力を取り入れた、白夜独自の結界である。

そんなオリジナル溢れる作品は、その更に次の瞬間には介渡と介渡モドキ約五十体が放った散弾によって粉砕された。

砂煙が舞い、白夜と介渡はお互いの姿が見えなくなる。白夜は袖を振り払い、辺りの砂煙を吹き飛ばして視界を取り戻した。

「私の弱点、気付いたんだ」

白夜の高級そうな着物は、いたる所に切り開いていた。これでは着物としての価値は無いだろう。公衆の前でこんなボロボロな着物を着用していては、過去の栄光を引きずるホームレスにしか見えない。先程自慢げに持っていた『これで貴方も豚足よ☆』も先端の兎モドキが紛失し、引っ繰り返したカップラーメンよりも酷い有様である。白夜本人にも、肌のあちこちに切傷が。だが自慢の九本の尻尾には何の傷も無い。

「私の『干渉の支配』は『一方からの方向の支配』。一方からは無敵だけど、多方向から来た攻撃に対しては一つ一つに『干渉の支配』をしなければならない。さっきのように四方八方から攻撃を加えれば、」

「『干渉の支配』の目から免れた攻撃が、白夜には届く。だろう?」

 

幾らなんでも分かりにくすぎる。

白夜の『干渉の支配』は多目的な能力だ。最も単純な例を挙げるとすれば、自身の攻撃に関しては威力を格段に上げ、防御に関してなら相手の威力を格段に下げる事が出来る。

これは攻撃を数字に例えると分かりやすい。例えば最初の攻撃、介渡が放った槍を『攻撃力500・単発』としよう。今の白夜は、これが自身の身に触れた瞬間、『攻撃力1』にする事が出来る。

そして先程の介渡の攻撃。これを『攻撃力300・沢山』としよう。白夜はその『沢山』な『攻撃力300』を、一つ一つ『攻撃力1』にしなければならないのだ。この『沢山』が20や30なら兎も角、100やら1000やらになるとキリが無い。

それにより『攻撃力300』の攻撃の幾つかは白夜の『攻撃力1にする行為』を免れ、白夜に触れる事が出来るのだ。はっきり言ってしまえばドラゴン〇ールの戦闘〇とk(ry

 

「流石4000年位生きてきただけある! 洞察力、計算力も秀でているねー!」

「このヒントさえなければ、介渡はジリ貧で白夜にボコボコ。それも面白そうだったんだが」

「どうだ? もう降参かい?」

白夜の弱点を発見した以上、介渡としては自分の優位は揺るがないものとなった。どれが本物か分からない介渡モドキ約五十体。自我こそ無いが囮には十分使えるであろう。このまま戦い続けても、何時か白夜が介渡の集団ミンチ作戦によってこんがり美味しいハンバーグにされる事は目に見えている。それを含めた意味で、介渡は白夜に最後通帳を出した。

白夜は黙って、自身に付着したホコリやら色々を手で払う。

そして顔を起こして介渡と目線を交えた時、瞳にはこれ程に無い闘気が満ちていた。溢れんばかりのプレッシャーに、優位である筈の介渡は精神的に半歩下がってしまった程だ。実際には下がっていない。

 

「よく私を見破ったわね。でも攻略はされてはいないッ! 私はこの手で、介渡の背をアジのサイズ(133,6センチ)まで縮めてやると決めたんだッッ!!!」

 

此処は決め所では無い、その場に居た一人と二柱はそのツッコミを喉元で辛うじて止め切った。何せ白夜の顔が割と本気だったから。

「褒めてやるわ介渡。でも私も武神の一角。人間に踏破されるとは微塵も思ってない試練の霊峰ッ! 此処からは一柱の神霊として、本気を出してあげるわ・・・・・・・・・・!!」

白夜の気配が膨張する。公園の下のブランコの水溜りから、インド洋程までの膨張レベルだ。とてもではないが風船で例える事が出来ない。白夜から漏れ出した覇気は大地を震えさせ、大気すらも戦慄する。神殿の壁は軋み、木々の葉は瞬く間に色素を失っていく。

神話に残らない、だが詩人によって語られる『最強の戦女神』。今は力の根源こそ失ったが、それでも神霊と言える程の力を有する。本気となった白夜ならば、大海を両断する事も大地を征服する事も容易であろう。だが、広大な器を持っていなければならない神霊が、一つの別の生命に対してマジになるとは、白夜の神霊の器というものが怪しいという証拠になる。

そんな神霊検定に合格りそうもない白夜は、拳を振り上げ介渡に何者よりも早く接近。介渡に近付いた事すらも感じさせず、天地の悉くどころか天地そのものを砕く拳を介渡に振り

 

「降ろさせてたまりますかこの大馬鹿者ッッッ!!!」

 

白夜の拳は二人の間に割って入った一つの影により全衝撃を吸収され、尚且つその影に白夜は背負い投げされて地面に叩きつけられた。

「君は、」

介渡の前に飛び出した一人の影。黒い軍服に蒼い髪、藍色の翼、全ての問題児をガン飛ばし一つで黙らせる知謀溢れる金色の瞳。それは、

「何で毎回毎回騒動を起こすんですか!? 学習出来てんのかっていう以前に脳味噌有りますか馬鹿白夜!!」

神殿の説教役、セイジ=幻月=アルカディアその人であった。

「これは全員に一人ずつ説教が必要が有りそうですね」

まず介渡を一目見る。その後背負い投げして叩きつけられた白夜、実況席に居座る二柱のお馬鹿さん。

「戦えと煽てたのはそこの二人ですか?」

凍り付く一帯の空気。浮気が発覚した新婚でもこのような空気は作れないだろう。

「肯定か否定か、それだけを答えて下さい」

アルカディアの笑顔。場は更に凍り付く。もう氷点下を突破したんじゃないかと思える位。この笑顔は相手の本能に恐怖を与える代物だ。幻想郷で言うならば、風見幽香と同じベクトル。それ以外の答えを出せば滅ぼすぞ、と脅迫していると同義。

「えー、そうなようなそうじゃないy

「リヴェンが一から十まで煽てましたッ!」

「てめリ

ルア、と言い切る前に、アルカディアが召喚した氷でリヴェンは凍り付いた。氷像と言って過言ではあるまい。糾弾の表情そのままに文字通り凍結した。これこそカチーンという効果音が正しい。アルカディアは振り返って、白夜の顔を一瞥し介渡を見下げる。

「さて、陛下には後ほど。さて介渡殿、貴方は?」

上からの脅迫。身長差10センチはあるだろうその上から、笑顔と共に告げられる死刑宣告は何とも恐ろしい。介渡は先程白夜と対峙した時の三倍の焦りで、最高の演技をしてみせた。

「さて、私は何のことやらさっぱr

「貴方がこの場で犯した罪は何ですか?」

演技など毛頭も通じはしない。必死に考え至った結論を一蹴、笑顔で論破。アルカディアはわざわざ介渡との顔の距離を背を曲げて接近させる。平時でなら嬉しいこの上無いが、今はその行為が恐ろしい他何でも無い。

これ以上迫真の演技を続けても、リヴェンに続く運命となるだけだろう。

「僕が白夜に喧嘩を売りました」

「素直で宜しい。貴方の帝国での生活の安寧を保障します」

嘘だ。この笑顔と口調は、『お前をボロ雑巾まで使って尚干乾びるまで鞭打ってやるから覚悟しておけ、変態紳士』と言っているのと同じだ。少なくとも介渡にはそうとしか聞こえなかった。

「さて、最大最悪の問題児についてですが、」

アルカディアは最後に、その眼光で白夜を射抜いた。忍び足で逃げ出そうとする白夜の動きが、蛇に睨まれた蛇のように硬直する。とても先程キレていたと思えない、雄々しかった(過去形)背中が震え上がった。

「貴方はどのような処置をご所望ですか?」

最早貴様に言い逃れの余地は無い。自分で自身の罪を見定めろとアルカディアは言った。白夜はカラクリ人形の如くカチコチと動きながら、ゆっくりとアルカディアの方を見る。介渡は勇猛果敢だった白夜の表情しか見た事は無い(あと酔った時の顔)。その恐怖に染まった顔が白夜にとって、アルカディアがどれだけの恐怖対象であったかが伺える。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、」

「そうですか。やはり投獄が一番宜しいですか」

言ってない。えっとの三文字しか言ってない。

「貴方のような暴虐装置は牢獄の中で仏陀のように悟りを開くのが一番宜しいと。私もそう思います」

訂正、仏陀は獄中で悟りを開いていない。投獄されるような方(敬語)ではない。

「ちょ待っt

「ちょうど、起源神殿から戴いた木製の牢獄があります。その御方の話によれば、あらゆる力をもってしても破壊、突破は出来ないとの事。その強度を貴方の馬鹿力で試してほしいらしいですよ」

「は!? ちょっとそれh

「お黙りを」

お願いします。とまでアルカディアは言い切らなかったが、その笑顔は「黙らなければ投獄。だが黙っても投獄」と言い放っている。それなら黙らなくても良いとは思うが、白夜はアルカディアが放つ怒気によって口を閉ざしてしまった。

木製の牢獄、と言えば鉄製の牢獄より突破は容易と思えるかもしれない。それは同じ場所に居る介渡さえも思った事だ。それも当然である。だから、この原材料の木は只の木ではない。

白夜は、アルカディアが『起源神殿から戴いた』という事から、『樹』と呼ばれる起源神を思い出した。その起源神でなら、白夜ですら突破出来ない牢獄を創り出す事は容易。

「貴方の投獄は決定です。以前は神殿よりその身柄を追放となりましたが、何ですか? Mなんですか?」

「違

「まあどうでも良い事です。今後はこのような問題が起こらないように各自精進する事。介渡殿、貴方も同じです。」

「ハ、ハイ」

本能的に敬語で返事した介渡。後悔は全く無い。この場でタメ口で話せば秒殺だ。精神的な秒殺だ。射抜く眼光で介渡の心は兎と化してしまうのがオチである。

「ではこの場は幕引き。何時説教をするかは各自に後程お伝えします。覚悟をもって、後の安寧をお楽しみください」

 

 

 

こうして介渡と白夜の対決は第三者によってお開きとなった。その第三者により、介渡は三日間に渡る説教と精神論を叩きこまれ、多少丸くなった(と思う)。リルアには一か月の禁酒を言い渡し、リルアは酒の無い生活に泣きまくった。アルカディアはそんなリルアに「それ以上泣いたら神殿の御神酒は全て没収します」と告げられ泣くに泣けない状態となる。

リヴェンは凍結状態から解除されると獄中。白夜は意に返さず獄中。その投獄帰還は三週間、脱酒・脱肴・脱問題を言い渡し、獄中にて問題があれば一度につき一週間の延長すると断言。当然一カ月も二カ月も延長となった。やっと脱獄した二柱は酒に溺れ、再び投獄される事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酒、肴、水。この次は何を奪われたいですか?」

「ふざけんなよディアさっさとこの牢から出しやがr

「問題行動と判断しますね。一週間の延長」

「は!? 私関係ないj

「文句が、ありますか?」

「有る筈が御座いません。申し訳御座いませんでした」

かくして、今だ二柱は牢の中に居る。