東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

日喰異変 ~東方陽蝕昼~ Ⅹ 

「さて、私はそろそろ上に行こうとするかな」

「行くのですか?」

城の地下深く、牢獄。魔理沙とこの城を治める一家の統領、トゥリズン=ブローディが底に居た。魔理沙は牢の外、トゥリズンは牢の中である。

「此処にはどうやらお宝は無いらしいからな」

「私の私物しかないので、仕方ないと言えば仕方ないですね」

別に有っても渡しはしませんけど、とトゥリズンは付け足した。当然その言葉は、魔理沙の耳に届きはしない。

「だから私は、お宝が有りそうな天守閣に行くつもりだ」

「やはり取りに行くのですね。人の物を」

「取るとは言い方が悪いな。借りるだけだぜ」

魔理沙の得意技はひったくりと無断貸出、そして無期限延滞だ。一度借りた物は返しはしない。そもそも返す気なんて毛頭無い。自分が死ぬほんの六十年程、妖怪達にとっては短い月日だろうというのが魔理沙の主張だ。

「じゃあな、縁があったらまた会おうぜ」

「あ、待って下さい」

早速出ていこうとする魔理沙を、トゥリズンは小さい声で呼び止めた。手首に付けられた手枷がガシャンと音を響かせる。

「一つ上の階層の牢獄に、貴方の友達が投獄されています」

「友達だと?」

魔理沙は振り返る。再思の道の近くである魔法の森に住む魔理沙が存在すらも知らなかった悪魔の城。此処を知っていてしかも自分と知り合いとは、一体誰だ? そんな奴居たっけな。

「紅白の服を着た、博麗の巫女です」

霊夢か!?」

魔理沙の問いに、トゥリズンはコクンと首を縦に振って反応を示した。

「枷と牢の鍵も開けておきましょう。助けてあげておいて下さい」

「おいおい、お前は此処に居るのにどうやって開けるんだよ」

「普通に開けれますが? 人間は出来ないのですか?」

キョトンとした顔で魔理沙を見つめるトゥリズン。は? そんなん常識だろ? というような事を魔理沙に訴えんが如くの視線である。

よく考えたら、こいつは吸血鬼だったな。人間が出来ないような所業は幾らでも筈だ。

「開けれないぜ。寧ろ開けれる方がどうかしてると思うぜ?」

「それもそうでしたね。失敬」

じゃあ私は行くぜ、と言わんばかりに魔理沙は箒に乗り、飛び去ろうとした瞬間にその足を止めた。

「そういえば、そんな力を持っているのにお前は外に出ないのか?」

「私ですか?」

そうですね、と一瞬答える事を躊躇うような表情を見せたトゥリズン。だがそんな暗い表情も直ぐに消し、明るい表情で答えた。

「出ようと思えば出れる。しかし、出ようと思えない理由も有るんです」

理由は教えれないが出る事は無い、とトゥリズンは表現した。魔理沙も人(人でないが)の過去に無理に干渉するつもりは無いしそもそも興味無い。そうか、と魔理沙は話を切り上げ箒を翻し、元来た道を戻る事にした。

 魔理沙が吹き飛ばしたホコリが舞うのを確認し、トゥリズンは見えない筈の空を見上げた。深い地下に造られた牢獄だ、空の紅い月は見えない筈なのだが、

「私は出てはいけない。出てはいけない・・・・・・・・・・・・・・・・」

まるで月に声を掛けるが如く、トゥリズンは小さく呟いた。その口の小さく鋭い牙を煌めかせて。

 

 

「お! 本当に霊夢じゃないか!」

「本当にって何の事よ! さっきあんたが降りて来た時にめいっぱい呼んだのに全く気付かないなんて」

耳の中にホコリが詰まってんじゃない? と霊夢は細い目で魔理沙の耳を覗き込む。だが当然ホコリも耳のゴミも入っていない。

「それより捕まってたんだって?」

「そうよ。それがさっき突然枷が取れたのよ! 牢の鍵も空いてたし、何だったんだろ?」

トゥリズンが鍵を開けた、という事は信じて良さそうである。同じ吸血鬼のレミリアやフランも同じ事が出来るのならば、今度借り出張の時に同行させなければならないな、と魔理沙は心の中で決め込む。

「なんか良く分からないけど、あんたが何か悪い事を考えてる気がする」

「そ、そんな事ないぜ!?」

両手をあたふたと振って自分の無罪を主張する魔理沙。まぁ当然、その通りなのだが。

「それより、霊夢はどうやって此処まで来たんだよ?」

魔理沙は、城の外壁が何者かによってヒビを入れられている事を知っている。それに、再思の道で道のマーカーの如く、霊夢の札が置かれていた。当然霊夢はこの場所の行き方を知っていたと思われる。

「此処に吸血鬼の城があったって事は知ってたからね。行き方も」

「じゃあ、この城とか吸血鬼の事についてどの位知っているんだ?」

「殆ど知らないけど」

はぁ、と魔理沙は溜息をついた。

「あ、でもこの城の城主は知ってるよ? ティユエル=ブローディっていう」

「そんな事知ってもなぁ」

相手の名前とか何とかを知らなくても弾幕ごっこは出来る。弱みの一つでも握れれば結構優位に立てると魔理沙は思ったのだが。

「あとあいつ、吸血鬼の歴史とかも語ってたなぁ。覚えてないけど」

「覚えてないのかよ」

魔理沙霊夢はそれで雑談を切り上げ、外に出る事にした。

目指すは吸血鬼の城主、ティユエル=ブローディの待つ天守である。