東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

日喰異変 ~東方陽蝕昼~ Ⅻ

「あいつは、」

「どうした? 木が歩いてたのか?」

「違うわ。私が負けた原因が居たのよ」

一瞬静止したと思えば、すぐに動き出す霊夢。目的の場所は目の前の悪魔の城砦の『天守』五階だが、霊夢にとっては今回は主犯よりも腹が立っているらしい。魔理沙は仕方ないな、と小さく溜息を漏らしながら霊夢の後を着いていく事にした。霊夢に着いて行った方が絶対に面白いと思ったからである。

「どんな奴だ? 霊夢がここまで気に止めるとは」

「簡単に言ったら、目玉悪魔かなぁ」

「目玉悪魔・・・・・・・・・・・?」

魔理沙はそう言われて、反射的にその姿を想像する。一つ目小僧か、百々目鬼か。悪魔なのだから日本の妖怪ではないのだろうが、そんな姿を想像すると面白くて仕方が無かった。先程の二匹の妖怪は雑魚だが。

「そいつにコテンパンにされたからね。腹が立って仕方が無いのよ」

霊夢がボロ負けしたのか? そりゃ珍しい事だ」

「ちょっと! さっきはよくも私をボコボコにして牢屋にぶち込んでくれたわね! お返しに来たわ!」

霊夢が大声を掛けた悪魔。修道女が頭に被るベールのようなものを揺らして、その悪魔がゆっくりと振り返った。魔理沙が想像していたような、一つ目小僧でも百々目鬼でも何でも無い。見た目だけなら普通の少女である。

「博麗の、巫女・・・・・・・・・・・・? 先程、投獄に成功したと報告が入っていたような気がするけど」

「残念だけど出てきたわ。意趣返しを兼ねて、もう一度勝負よ!」

お祓い棒を悪魔に向ける霊夢。悪魔はゆっくりと霊夢の言葉を噛み締め、ゆっくりとうんうんとわざとらしく頷き、宙に浮かび始めた。

「大公閣下の念願を果たす為には、博麗の巫女は障害の一つ。もう一度、牢に入ってもらう」

「二度とそんな事にならないわ!」

霊夢は二つのお手頃サイズの陰陽玉を展開し臨戦態勢に入った。

魔理沙、邪魔しないでよね」

「あいよ。ゆっくり観戦させてもらうぜ」

魔理沙はゆっくりと霊夢から離れる。ある程度魔理沙霊夢から離れたのを確認すると、悪魔も小さく呪文を唱え出した。

「私は、エムプティ=コンセプチュアル=スぺアル。位は伯爵。大公閣下に仕える、直属の軍師」

スぺアルの背後で、大きな目が一つ展開される。その目の内部は瞳以外が一回り小さい目で埋まっている、見れば慄くような魔法陣。霊夢が彼女を『目玉悪魔』と呼ぶのも納得がいくだろう。やがて城の中庭は、彼女が展開した瞳によって埋まっていく。

 

「大公閣下の願いを叶える為、貴女は此処で撃墜する。

究極『物理学を超越する物理理論』」

 

大量の弾幕が、霊夢に襲い掛かった。

「さっきのと一緒か!」

初見でなら兎も角、二度目の同じ符は当たらない。霊夢は弾速、大きさ、コースを確認し、

「さっきのと違うじゃない! どういうこと!?」

「世界は常に流動する。私の弾幕も同じ、世界は変化を繰り返す」

「言ってる事が訳分かんないわよ・・・・・・・・・・・・・・・!」

これでは初見と言って等しい。霊夢は大きく旋回して回避する。弾幕の手練である霊夢ですらも手を焼く弾幕。如何に難易度が高いかが伺える。霊夢は回避しながら陰陽玉から封魔針を飛ばし、スぺアルを牽制しているが本人にはその牽制は殆ど意味を成していないようだ。

「先程と違って、中々当たらない」

「誉めてくれて有難うね」

スぺアルからの誉れは、霊夢にとって嫌みにしか聞こえない。霊夢も嫌みで返すが、スぺアルには通用していないようだ。本人は嫌みとも思っていないらしい。それに更に嫌気の挿した霊夢は、一際強力な封魔針を用意した。

「博麗の巫女が頑張って精錬した本家封魔針の威力、喰らうがいいわ!」

大量消耗品の封魔針とは違う、一食分程度の時間とお金の掛かった至高の封魔針。見た目はなんら大した違いは無いが、迸る霊気が格の違いを思わせる。霊夢はそれを全力でスぺアルに向かって投げつけた。高級封魔針は風を切り、通常の封魔針を超える速度でスぺアルを強襲する。

「当たったら、痛そう」

コンマ一秒さえあれば結構な距離を離れていたスぺアルに到達するであろう高級封魔針を、スぺアルはまるで投げられる事を知っていたかのようにゆっくりと回避した。高級封魔針は城の外郭に直撃し、それを貫きヒビすらも入れる。

「嘘!?」

必中を悟っての一撃だ。霊夢の勘が当たると叫んだ。霊夢自身も必ず当たると思っていた。スぺアルは投げられる事を知っていたかのように、霊夢が投げる一瞬前から回避行動を開始していた。

霊夢が投獄される前にスぺアルと激突した時、この手段は使用していない。故に、未来を知っていた上での行動、としか考える事が出来ない。

「未来を知る事は、物理的に不可能ではない」

スぺアルは小さく、ゆっくりと口を開いた。

「私は、物理学が生んだ悪魔。神学とは相容れない物理学が、神の存在を仮定した時の結論。それが私」

「ほう、そういう事か」

スぺアルの言葉を聞いて、魔理沙は小さく自分の中で結論を出した。霊夢はこの悪魔の正体を知らないだろう。文系の人物では存在すらも知らないであろう物理学の悪魔。魔理沙はたまたまその存在をパチュリーに聞いた事がある。

霊夢ー、ヒントやろうか?」

「要らないわよ! こいつは私が何とかする」

霊夢が即答で却下。魔理沙は一瞬呆けたような表情をして、小さく溜息をついた。

「あぁ、そうか。ならいいけど」

霊夢は知らないだろうが、彼女は物理学が神の存在を仮定した時に生まれた悪魔。

 

ラプラスの悪魔、という言葉を聞いた事あるだろうか?

 

任天堂で大人気の、摩訶不思議なモンスターがカプセルによって『ゲットだぜ』とかなるゲームに出てくる未確認生物のようなものではない。

ラプラスの悪魔は過去、現在、未来の全ての事象を確認出来る存在とされる。正攻法では金剛鉄壁と言って過言ではないだろう。魔理沙霊夢が本人の謎を解けない限りは勝てないと思い、これを面白おかしく観戦する事に決めた。