東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

日喰異変 ~東方陽蝕昼~ ⅩⅢ

「くらいなさいっ!」

霊夢が勢い良く、必殺の封魔針を投げた。先程避けられた封魔針とは若干質は落ちているが、化生の類に直撃すれば無事では済まない。刹那に五つ投げた封魔針は、スぺアルに向かって高速で接近する。

「当たらないよ」

未来を予見していたかの如く、霊夢が投げる前に回避を初めていたスぺアル。封魔針は凄まじい速度でスぺアルの横を通過し、スぺアルの背後に展開されている結界に直撃。大きな軋みの音が聞こえヒビが入るが、本人へのダメージが無い為即座に修復されていく。当然、この間もスぺアルが霊夢を撃墜せんと猛攻している。同名のスペルカードを霊夢は見た事があるが中身が全開とはまるで違う。初見にして厳しい弾幕を避けながら必殺の一撃を与えるのは困難を極める。ただでさえ攻撃の機会が少ないというのに、避けられては消耗戦だ。手元の封魔針が無くなれば後々面倒な事になりかねない。

「もう、何で当たらないのよ!」

「私は、世界の流動を観測出来る。故に、貴女のやりたい事が見える」

霊夢とスぺアルの攻防を見ながら、魔理沙は小さな休憩を取っていた。そもそも大して疲れてはいないが、霊夢が苦戦している珍しい姿を見れて中々満足している。そもそもその本人に邪魔するなと言われたし。下手に手を出せば霊夢魔理沙も撃墜するだろう。

「ちょっと威力は落ちるけど、コイツみたいな相手ならこれにするしかないわね」

霊夢は装備換装。高威力を誇る封魔針から、誘導能力を持つホーミングアミュレットに変更した。幾ら高威力でも当たらなければ意味が無い。少しのダメージでも当たり続ければ蓄積する。霊夢は大きく旋回して四方八方から猛攻を加えているスぺアルの弾幕を回避しながら、ホーミングアミュレットでの攻撃を開始した。ホーミングアミュレットから札を放出され、スぺアルに直進する。スぺアルは当然の如く霊夢が攻撃する前から回避を開始しているが、ホーミングアミュレットはスぺアルの動きに合わせて誘導し、撃墜せんと迫る。

「誘導弾、」

スぺアルは右手の手元に小さな魔法陣、左手の手元に小さな結界を展開。霊夢と相対するように旋回しながら魔法陣から弾丸を射出、矢継ぎ早に繰り出される霊夢のホーミングアミュレットを撃墜。撃ち漏らしたものは左手に展開した結界にて弾き返す。

弾幕強化。博麗を、撃墜する」

スぺアルの言葉に応え、弾幕の激しさが一層増す。霊夢は更に細かい動きで弾幕を回避するが、最早攻撃する余地が無い。ホーミングアミュレットも、ある程度狙っておかなければ誘導すらしない。

「これじゃ攻撃すら出来ない・・・・・・・・・・・・・!!」

スぺアルは一定のダメージを与えなければスペル変更すら行わない。当の本人は未来を見るとか何とかで攻撃が一切当たらない。先が見えるだけで、ここまでの不利に陥るとは思ってもなかった。

「仕方ない、」

霊夢は一枚の札を取り出した。その札は神威に満ちており、見るだけでも自身の罪深さを感じてしまう。あの札から召喚される陰陽玉は圧倒的な能力を持ち、場の弾幕を薙ぎ払う程の強さを誇る。

これを俗に『ボム』という。

 

「夢想封印・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

 

霊夢の奥の手。正直、後々の吸血鬼の為に出来るだけ残して残しておきたかったのだが、このままだと事故によって撃墜される恐れもある。手の内を明かさずにやられては面目も付かない。

召還された、七色に光る陰陽玉は辺りの弾幕を薙ぎ払う。とてもではないがかなり眩しかった弾幕は掻き消され、スぺアルの姿が露わになる。

「これは、」

「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

七色の陰陽玉はスぺアルに圧倒的な質量をもって迫った。スぺアルはこれまでのように回避行動には移らず、自身を覆う程の結界を展開して防御する。そこに陰陽玉が上から圧し掛かるように直撃し、勢い良く地面へと叩き落とされた。

「やっぱり動けなかったか」

魔理沙は誰にも聞こえない位の小さな声で呟く。魔理沙霊夢とは違い、スぺアルの正体とその能力の性質を知っている。当然弱点も分かる。

ラプラスの悪魔、世界を構成する最も小さい物を見る事が出来るという存在だ。物理的にその動きを観測し、把握し、過去現在未来全てを理解出来る。普通ならそんな奴悪魔ですらないと思うが・・・・・・・・・・・・・・・・・・、奴は悪魔で神様じゃない。見れない将来もあるって事だ」

当然、この声は霊夢には届かない。仮に届いてればヒントあげたとか何とかでこっちにも夢想封印が飛んでくるかもしれない。結構痛いのでそれは勘弁願いたい。

「これでどう?」

霊夢にとっては何故スぺアルが回避しなかったかが疑問だが、とりあえず夢想封印は当てた。霊夢にとっては大きな前進である。砂埃が晴れ、スぺアルの姿が露わになってきた。

「中々、痛かった・・・・・・・・・・・・・」

結界による防御は完全に遅れていた。展開までは間に合ったが、その結界の強化が行われなかった。故に殆どのダメージを相殺し切れずに、夢想封印を喰らってしまった。スぺアルの服は所々破れ、被っていたベールは紛失している。城の中庭全体に広がっていた巨大な弾幕結界はスぺアルが被弾したため消滅した。

「神の威光が込められた、さっきの球は何?」

「陰陽玉。そんなんも知らないの? 意外と無知だねぇ」

「陰陽玉、ひょっとして・・・・・・・・・・・・・・・・」

道教か、という言葉をスぺアルは言うのを止めた。博麗の巫女はどうやら偶然にも当たったとでも思っているのだろう。それならわざわざ手の内を明かす事は無い。自身の弱点を晒す意味も無い。自分の役目は博麗の巫女に対する時間稼ぎで、それが駄目でも消費させれる物はとことん消費させる捨て駒だ。

「大公閣下の為に、この道を通す訳にはいかない」

スぺアルは再び弾幕結界を展開する。先程と同じく、城の中庭全てを飲み込む程の大きさだ。大小様々な大きさの瞳が開かれ、一斉に霊夢を睨んだ。

「私は全知の悪魔。私を知らない奴は私を攻略出来ないわ」

「良く言ってくれるわ。悪魔如きが全知だったら神様は何なのよ。神様だって全知全能じゃないんだからね」

博麗の巫女と全知の悪魔は、更に激しいぶつかり合いを始めた。