東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

貴族鎮圧作戦との並列実行。

「さて、私達の方も速急に動かなくてはなりませんね」

アルカディアは机の上に置いていた書類を、トントンと高さを合わせて整理。その書類には、『貴族反乱鎮圧作戦』と書いてある。その下には『作戦解決に軍直轄ギルド、コルホスΣを派遣。現地指揮系統・作戦詳細は同組織に一任する』と。

「中央集権且つ民主制であれば、遠地の貴族が自分達の待遇が相応しくないと考えるのも納得がいきます。しかし、これを見過ごしては国家が廃れてしまう。広大な領土を持つ帝国にとって、暴動の鎮圧による治安維持はとても大きな意味合いがある」

帝国で『貴族』と呼ばれる者達は、帝都から離れた辺境を代理支配する一族の事だ。元々が豪商であったり、騎士団であったり、とりあえず帝国に貢献した者らが皇帝から『貴族』の称号と領土の代理支配の許可が与えられる。当然拒否権はあるが、皇帝から何かしらの称号が与えられる事は、帝国民にとっては名誉なのである。

反乱を起こす貴族は、長い歳月で皇帝への感謝を忘れた不届き者。当然、鎮圧後主犯格は重罪を課せられ、それに協力した者たちは人外問わず裁判にかけられる。称号も領土も没収だ。

アルカディアは整頓した書類を机の上に置き、上司が座る椅子の方向に振り向いた。

本来ならそこで手渡した書類を見てくれている筈。だがアルカディアにとって唯一の上司、リヴェン=キングアトラスは違った。

「さて、治安維持も大切な件ですが。閣下? 起きてます?」

「ふあぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。当然だ、寝てる訳ねぇだろ」

涎が書類に着いている。誰の為にわざわざ書いたと思ってるんだ。だがこの程度でアルカディアは怒らない。悲しいかな、既にこのレベルの問題は見慣れてしまった。涎も何かも無視し、当然リヴェンが寝ていた事も無視して、アルカディアは質問した。

「南方のレパント諸島はどうなったんですか?」

「は? 何だそれ。俺ぁ知らねえぞ。あぁねむ・・・・・・・・・・・・・」

レパント諸島沖で、起源神ウアス殿がお怒りになっている件です。原因は閣下ですよ?」

起源神ウアス。この『向こう側の世界(便宜上そう呼んでる)』を創り出したと伝えられる、絶大な力を持つ起源神六柱の一角である。最近まで引き篭もり生活を送ってきた彼女だが、現在は積極的に持病の療養も兼ねて、外出を繰り返している。

「知らんて。勝手に怒りだしたんだよ、あっちが」

「自分には非が無いと。本人がそう言った時は大体違うのですが」

「知らないってホントに! 何で信じてくれないんだよ」

「日頃の行いですね。猛省して下さい。序でに死んでください」

「何だと!? テメェこそさっさと彼氏見つけて早いうちにけっこ

リヴェンがその後どうなったかは、その部屋の前を偶然通った兵士の表情から想像してもらいらい。当然、帝国軍総司令部ではその日、何度も断末魔が木霊したんだとか。

 

 

 

「そう言って上司に出撃命令とか、どうかしてる」

リヴェンは、アルカディアによってレパント諸島沖に出撃させられていた。護衛は一切居ない。こんな奴に護衛は必要無いとアルカディアが進言したのだという。本来ならリヴェンの眷族か誰かが百単位で護衛に回る筈なんだが。

レパント諸島は、古代宙に浮遊していた浮き島群が地上に落下してきて出来たと伝えられている。四季が存在し、風土も豊かで治安も優れ、大陸からも近い事から大勢の観光客で賑わう。帝国武神群第二位神隊後衛、『風神』ハヤテ=ウィンディール=レパントが主神としても知られている。療養の場所とも知られ、数多くの病人が安静を求めてこのレパント諸島にやってくる。

そのレパント諸島の沖は、現在厳重警備の元立ち入り禁止区域に設定されてしまった。原因は巨大な嵐の発生と公表されているが、本当は起源神ウアスの暴走である。

実際に嵐も巻き起こっているが、リヴェンにとっては何の障害でもない。竜巻の一本や二本や千本、有っても無いような物だ。指一本でどうにかなる。

「お、居た居た。おい、ウアスー」

リヴェンの視力と移動速度は桁違いと言って等しい。居たといっても大分先に居るのだが、その声ははっきりとウアスに届いた。

「リヴェンか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

深い深い蒼の髪の少女。少女と言っても身長は高く、正直リヴェンとは35センチ以上も身長差がある。この場合リヴェンが小さいだけなのだが。ウアスは横目でリヴェンを睨みつける。その眼差しは獲物を見つけた猛禽類より鋭い。そしてその額には、はっきりと確認出来る程青筋が立っている。怒髪天を突くとはまさにこの事、最早その怒りは天を突くどころでない。天を貫いている。ウアスを中心に海は渦巻き、空は荒れていく。元々巨大な嵐程の規模であったのに、今や規模はその比では無い。本人もあまり冷静な状態で無くなり、放っておけばレパント諸島に甚大な被害が出るのは確実だ。だがリヴェンにとってそれは必ず避けなければならない。

「まぁ、なんだ。酒でも呑んでゆっくり話でm

「此方から出向く暇が省けた。態々死にに来たか」

 嘆く突風。最早風というカテゴリーに収まらない。伝説級の刃物すらも断ち切る無情のカマイタチがリヴェンを襲った。リヴェンは腰のホルダーに収まっていた拳銃『烙印』を抜き、矢次早に発砲。神鉄で製造された実弾と地獄すらも焼き尽くす劫火がカマイタチを迎撃する。それをすり抜けたものも、リヴェンの持つ愛刀『卸炎』によって例外無く叩き伏せられた。

「オイオイ何でキレてんだよ。お前のせいで気象庁が報告に困るだろうが」

「知らん。私はお前の発言に腹を立てているんだリヴェン、それ以外はどうでも良い」

いかん。このままキレた状態で放置するウアスは、暴走状態の白夜より太刀が悪い。如何せん居候とはいえ神王であり、創造神である。恐らく活動出来る神霊の中では最強だ。無双だ。天下統一だ。キレるだけで下界の命運が掛かる。こんな恐ろしい奴を短気にするとは何事であるか。

「とりあえずお前を、この世界から消滅させる。話はこれで終わりだ」

多大な怒気を発するウアス。これ以上にキレれば、大陸が海の下に沈みかねない。それだけは何としてでも避けなければ、全ての責任を押し付けられてしまう。

「何か理由が有ってのブチギレなんだろ? この俺に教えろって、相談に乗ってやるぞ」

「ほう。ならば敢えて言おう。

 

 

 

貴様、何時私が『核融合技術』を支配して良いと言った・・・・・・・・・・・・!!!」

 

 

 

核融合。人が数少ない神の力に届いた技術であり、現代における最大のエネルギーである。『核熱』という言葉が使われている昨今だ。

核熱はいわば『小さな太陽を作り上げる』という事。生み出されるエネルギーはかなり多い。

だが、これが完成してしまうと人と神とのパワーバランスが崩壊してしまう。リヴェンは『核融合技術』を悪魔として顕現させ、それを眷族とする事で『核融合技術は神によって支配された』という形を取った。これによって神霊達の力は増大し、人が神に依存する時代が更に長くなった訳だが。

神霊の存在意義は人に討たれる事だッ! 霊峰として人に攻略される事だッ!! 核の力はそれに必要だった。お前は自ら、神霊の寿命を長めたんだぞ・・・・・・・・・・・・・!!!」

激動。ウアスの怒りが天地を震え上がらせる。今頃気象庁はどのように発表するか、その対策に手を焼いている事だろう。

「俺は俺で考えが有ったからやったんだけどな。今核融合が完成すれば、一発の兵器が太陽神レベルなんて、現代じゃ受け入れられん」

「人にはそれに対応する力があった! お前はムザムザと・・・・・・・・・・・・!!」

駄目だこりゃ、とリヴェンは小さく溜息をついた。ウアスとリヴェンの間では考えの差が有る。これを埋め合わせるのは簡単な事ではない。実力行使じゃ止まらんだろうし、どうした事か。

此処で何とかいっても無駄なような気がして来たので、反論する事にした。

「それはねぇな。お手元に太陽が有るのを人間が分かって使わんとでも思うか? 答えはノーだ。人間は持っている技術を直ぐに使いたくなる。結果を分かっていてもな。使ってから初めて『これは使ったらヤバい』と確信する。だが、これは一旦使ったら終わりだ。故に俺はフレィジを顕現して、眷族にした。この行為に俺は、何も悪いと思って無い。寧ろ善意と確信してる」

「寝言は寝て言え、愚か者!!!」

ウアスが右手をリヴェンに向け、号令を発する。すると海流が変化して渦巻き、其処から一匹の頭が五尺はあろう巨大な蛇が現れた。この近海でも主レベルの海蛇だろう、それに値する厳かな気配を持っている。だが、リヴェンは主レベルとしては格が違う程の、隠せ切れてないパラメータを感じ取った。恐らく、ウアスが眷族として力を与えたのであろう。そうであるならば、その能力値は並の神仏を遥かに超える。だが仮にそうであっても、リヴェンの敵ではない。

と思ったら、身体が動かなかった。

「おろ?」

同時に炸裂した、海蛇の召喚した竜巻。発生から直撃までコンマ一秒も無い。常人では何でやられたかも知らずに絶命するだろう。

だがリヴェンは人でも無いし並の神仏でも無い。相対する相手がウアスで無ければ、手のひらで唸る劫火で瞬殺だ。だが強制的に眷族にされた方の権利も配慮してやらねば。リヴェンは竜巻の中、持つ拳銃『烙印』による一つの弾丸が海蛇の眉間に直撃した。海蛇を白目になってその場に崩れ落ちる。

(普通に考えたらこのまま続けてもラチが明かないか。そう考えると)

リヴェンは柏手を二回叩く。するとリヴェンを遥かに上回る火柱が、リヴェンを包み込んだ。その火柱は大海を貫き、恐らく海底で突貫工事をしているのだろう。触れば創造神ですら火傷を負う業火である。ウアスが右手を振って、その業火を欠片すら残さず吹き飛ばした。そもそも自分を包んで何になるのか、という疑問もあったが、とりあえずリヴェンをボコボコにしたいという意思が、知的好奇心を上回った。

熱波による視界の邪魔が消えると、リヴェンの背後に一人の女性が立っているのが分かった。一瞬でウアスは、彼女が持つ天然の気配で何者か確信した。

 

「『大量破壊兵器』!? わざわざ召喚までしてくるとは!」

 

核融合』という技術は、神々が(というかリヴェンが)手中にしている。それは『核』という存在を顕現させ、リヴェンがそれを屈服させ眷族としたからである。眷族であれば世界の端から端まで呼び寄せるのも、柏手と召喚の術を使えば瞬時に行える。

「リヴェン様ぁ、呼びました?」

「おう、呼んだ。此処に呼んだのh

大量破壊兵器。何故お前は今、太陽神の元ですごしているのか? 答えろ」

ウアスが井戸端会議ごっこの隙すら許さず、リヴェンに背後から抱きついている女性に問うた。ちなみに身長差は目測二十センチくらいだろうか。

「フレィジ=キングアトラス=ウォーマドです、創造神様ぁ」

どうも拍子抜けするような喋り方をする大量破壊兵器である。見た目もおっとりとした性格をもつだろうと素直に予想出来る程、というかその道の人の鑑かと思える。リヴェンと同じ朱色のロングヘアーは、リヴェンの眷族故だろう。

「フレィジはリヴェンの元で生きていて楽しいですよ。それがどうかしましたか?」

フレィジは素直に答えた。だがウアスはその答えを真っ向から否定する。

「その楽しみが偽りとは思えないのか。お前は人類史を進歩させる存在として確立されたのんだぞ。そんな大きな力と使命を背負って、今だらしない太陽神に仕えている事が! 楽しいと言えるのか!!」

ウアスは、創造神である。人間を創り出す以前にも、何度も知的生命を創り出し、それらは自らの手で滅んだ。それも世界を丸ごと巻き込んでだ。ウアスは失望しつつも、『過失を見逃さない』『自らの道を歩む』運命を背負わせた種族、人間を創り出した。だがそれらは、突然変異の因子を持った者だけが生き残るようになってしまった。正直者に未来は無かったのである。この世界でウアスが理想としていた人間の鑑は、帝国が建国してからは一人たりとも居ない。

だが、ウアスは人間が愛おしかった。故に、その進化を信じ、待ち続けた。

そして試練である、神々の討伐が目の前まで迫っていたのだ。それを、一人の駄神によって見るも無残に叩き潰された。如何に自由とはいえ、ウアスが愛した者たちの未来を潰す行為は、ウアスの逆鱗に触れたと同義である。

「お前は、

 

「人間を! 舐めては、いけませんよ」

 

フレィジが、ウアスの言葉を掻き消した。ウアスはその予想外の反応に驚愕し、一歩後ずさる。と言っても地面でなく浮遊しているので、一歩分と言うのが正しいが。

「何もフレィジだけが、人間の進化の糧ではありません。創造神様、貴女は全体を、大局を見過ぎているわ。もっと近くの事を見てみて下さい」

フレィジが断固たる思いで答える。その意思たるや、先程のウアスすらも上回る。ウアスには創造神として先を見る義務、生み出した者達の行く末を見届け、それらが進化の系譜と創造の支配に至る事を信じてやまない。その為には神霊の討伐は必須である。神霊達自身も、それは知っている。

だが、フレィジ=キングアトラス=ウォーマドは、人間の進化という義務を背負って生まれた。その義務感はウアスにも劣らない。

「私も最初は義務を通す為に、リヴェン様の誘いは断りました。が、見て下さい。

 

私が居なくても、人間達はここまで進化してきたのですよ?」

 

核技術の開発は、リヴェンがフレィジを眷族にした後成功した。安全性を確かめ、実用に至って、少し前まで使用され続けていた。

人の技術進歩、所謂進化に停滞は無い。彼らは進化を続けて、核技術が必要無くなるまでに進歩してきた。核は最早、兵器としてしか使用されていない。そして帝国には、核兵器を遥かに上回る影響力を持つ部隊・兵器が幾つもある。

 

「今の世界に、核の力は必要ありません。私の背負っていた使命は、始まる前に下ろされたのです。

だからリヴェン様を責めないで。リヴェン様は私の暴走による人間達の滅亡を阻止したかったのです。

それでも創造神様がリヴェン様を責め、存在を根絶しようとしているのなら仕方ありません。

蟷螂の斧でもいい、この存在全てをもって貴女に反抗し、リヴェン様の為に散る! それがリヴェン様の眷族としての最大の誉れであり、恩返しですっ!!!」

 

 

 

 

 

 

「勢いで説得した、という見方が一番正しいですね」

「まー、そうだな」

「フレィジは疲れました・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

レパント諸島より西、西州海で北上する艦隊。輪形陣を組んでいるその中心に佇むのは艦隊旗艦、超弩級戦艦『桜華』。その艦前部で海風に当たっているのは、先程創造神との口喧嘩を制したリヴェンとフレィジ、そしてアルカディアである。

「相手も感情的になっていたのが幸いでしたね。何時ものウアス様だったら速攻で『何行ってんだお前ら』で一蹴だったでしょう」

むぅ、とリヴェンはすねるがまぁそうだっただろう。創造神とて完全完璧ではないのだ。

「ボコし合いに発展しなかったのは何よりです。あんたらが半分でも本気を出せば、このヘルヴェル大陸は消し飛んでいたでしょう、確実に。と言っても上層部だけですけど」

「そんな事より! コルホスΣは作戦成功したか?」

「無論です。コルホスΣにはいずれ、人間達の集団として最高レベルのギルドになるでしょうから、ムザムザと難易度の高い依頼出して全滅なんてしませんし。まぁ、練度がある程度高い悪魔に出逢った事は予想外でしたが。あれ、北方で意外と名を馳せてた奴ですよ?」

「フレィジはそんな事より、早く帰りたいですぅ」

「おいおい、一応ウアスからレパントと大地を守る為に殆どの力を使って今疲れ果ててるんだぞ? たまにはゆっくり船旅、良いじゃないか」

と言ってもこの超弩級戦艦『桜華』、最新鋭の戦艦で神造の機関を搭載しており、巡航速度でも50ノット毎kmは余裕で超えているのだが。こんな早い船旅をゆっくりと言うのはやはり、自分の足の速さに自身があるからだろう。

「間もなくヰ島の泊地に到着です。それから休みを取りましょう」

 

西の水平線に浮かぶのは、傾き沈む赤い太陽。リヴェンは突風で乱れる髪を整え、用意させていたお神酒を呑んだ。