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東方物語録 ~東方二次小説置場~

『堕華(おちばな)』っていう馬鹿が小説を公開してる所です。不定期でない程度に不定期。

ヲ島奪還戦。

ヲ島。それは帝国が所有する空軍基地がある要塞島の中でも、かなりの規模を誇る要衝である。守備隊の数は5000、配備されている航空機は500を超える。帝国の南下作戦に合わせて、迎撃能力を強化していた。

 

だが、未明に隣の大陸、通称『レイ大陸』からの大規模な敵部隊の接近を察知する。

 

参謀長官は即座に決断。ヲ島守備隊と航空機を撤退させ、敵部隊を迎撃網で漸減させつつ、撃滅する為大部隊をヲ島に送り込んだ。主力を敵正面から、援護部隊を背後から強襲させ、押し込み、島の西側へ追いやる。そして、神霊を主幹とした部隊で大打撃を与えて壊滅させる作戦だ。数だけでいえば、敵軍想定数が八千に対して動員兵力は後方支援を含めて三十万を超える。数値上は圧勝である。

 

「エレナ! ドールが一体、突っ込んでくる!」

「対空砲火! 迎撃して!」

上陸部隊に襲い掛かる、敵機動人型兵器、通称『ドール』。『レイ大陸』側が所有する主力兵器である。機種によってまちまちだが、高い機動性、防御能力、火力を誇り、動力源等は不明。搭乗員数は一名で、その操縦者によっては神霊をも打倒する。帝国が計算した統計上では、『ドール』一体の撃破に対する人的被害は五百を超える。だが、昨今は統計上の被害を上回り、一機に対して大隊が壊滅する被害も出る事が有る。

今回のドールは少々練度が高いようである。第二十二大隊の対空砲火を掻い潜り、大隊の中枢・大隊長エレナを討ち取らんとビームソードを振り降ろす。エレナは自前の二振り、右手に持つのは長さ一メートルを超える大太刀、左手に持つのは五十センチ程度の長さの脇差にて受け止めた。腕と肩が悲鳴を上げたが、エレナはそれを無視して反撃を加える。敵ドールはそれを飛翔して回避、左手に持っていた射撃武器で大隊全体に攻撃を与えた。エレナはそれらを大隊に被害が出ないよう極力弾き返し、敵ドールを追撃する。だが、速度・機動力共に相手が上回り、まともな追撃戦を行えない。更に、エレナが最初のドールに注意をひかれている間に、他の敵ドールが大隊に向かって突っ込んできているではないか。

「まずい!」

エレナは即座に大隊に戻ろうとするが、最初に追撃しようとした敵ドールに斬撃を加えられた。服の下には鎧があったが、敵の斬撃はそれを突破してきた。エレナの身体から鮮血が舞う。

「ぐ・・・・・・・・・・・・・・・っ!」

反転するものの、敵は第二撃を放とうと大上段にビームソードを構えていた。振り下ろされるであろうそれは、とても防御が間に合うものではない。エレナはドールを睨みながら、降ろされる斬撃とそれによる死を受け入れた。

 

「私の友達に何やってんの」

 

小さな拳、それから発生する怒濤の嵐。攻撃最中だったドールは嵐によって跡形も無く吹き飛んだ。

揺れる銀髪、揺れる袖、揺れる尻尾。一騎当千の実力者、帝国最強の砦、最強の戦女神等など数多の二つ名を持つ、人類最大の夢を司る者。どうしようもない馬鹿で、ここぞという時に一番頼りになるケモミミ少女。

華翠玉 白夜。

「白夜、」

「第二十二大隊は貴方の部隊。早く守ってあげて」

白夜の言葉に籠る意思。エレナはそれを感じ取り、頷いて自身の部隊の防衛に戻った。白夜は、戦況をざっと確認する。

「主力は大分押してるね。背後を突く部隊もちゃんと展開出来てるようだ。普通にいけばこのまま押し切れるわ・・・・・・・・・・・」

だが、油断はならない。敵主力兵器ドールは強力であり、確認された新兵器も脅威である。戦況が一気に逆転、というものありうる。

だが、この島は渡さない。

白夜は敵ドールの駆逐に動き出した。白夜に命じられた使命は、迎撃に出るドールの駆逐である。白夜の干渉の力を前にすれば、相手になるドールは一機たりとも存在しないだろう。ただただ白夜の拳の一撃で、粉砕されるのみ。白夜は迎撃部隊の中でも主力であろう、隊長格のドールに襲い掛かる。

「!!」

隊長格のドールは抜刀し、それを白夜の居る方向に振り下ろした。ビームソードの刀身は瞬時に伸び、大分ある白夜との間合いを無視して頭上から攻撃を仕掛ける。

だが、通用しなかった。白夜は避ける事無く生身で受け止めるが、逆にビームソードの方が折れた。白夜は更に突進し、ドールを間合いに捉える。敵ドールは回避行動を取ろうとするが、時すでに遅し。全てにおいてドールの性能を超える白夜相手に、逃げれる術は無い。

「はっ・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

 

レイ大陸の技術は、帝国のそれを大きく上回る。ドールという機動兵器がその一例だろう。兵器に関する性能差は大幅にあるが、物資兵站に関しては帝国の方に分が有る。レイ大陸の大きさはヘルヴェル帝国の領地の半分も無い。だが量で攻める形では、被害は広がる一方だ。

基本兵力では劣るが、神霊という部隊が帝国にはある。それらは一騎当千、時にはドールですらまともに渡り合える。白夜に関して言えば相手にすらならないだろう。

だが。ものには例外というものが存在する。

 

隊長格のドールを庇い、白夜の渾身の一撃を受け止めた兵器。

それは突きだした白夜の右腕を絡め捕り、その勢いを利用して白夜を地面に向かって投げつけた。白夜は抵抗出来ずに、地面に叩きつけられる。白夜自身へのダメージは軽微であるが、その存在に全前線の動きが止まった。

レイ大陸にて信仰の対象となる者。高さは2メートルもないコンパクトな形、極めて人に近い外見。帝国軍の正式な撃墜数は二機、それに対する被害は六十万。被害比率、一機に対しておよそ三十万。

帝国はその機体を畏怖を込めて、

 

「機神、か・・・・・・・・・・・・・・・・!」

 

「参謀長官、」

「はい」

帝国海軍第二艦隊。ヲ島奪還の為、アルカディアを筆頭とする軍団司令部はヲ島沿岸に、第二艦隊旗艦『日元』に設置された。第二艦隊は揚陸部隊の護衛や遠距離防空攻撃を行い、ドールを漸減している。

「機神が三機も出撃してくるとは、参謀長の予想を上回る数です」

機神。現在確認されている、『レイ大陸』の所有する最大最強の兵器である。歴史上二機しか撃墜出来ておらず、それに対して機神による被害は軍だけで六十万を超えている。その民間も加えると数で表せられない。表したくなくなる程だ。

この撃墜記録は、帝国軍によるものではない。一機は『起源神』ウアス(ウアスの住む土地に『レイ大陸』が拠点建設の為侵入、レイ軍は全滅)によるもの、もう一機は『全知』リルア=オムニポテント=ヘルヴェル(帝都大空襲の際に出現した機神を破壊)皇帝によるものである。つまり、帝国軍は創立・交戦してきて一機たりとも撃墜できていない。

加えてみれば、『太陽神』リヴェン、『戦女神』白夜ですら撤退させただけである。

「相当此処が欲しい訳だ。簡単にはあげないけど」

既に戦力の追加が決定している。更に投入されるのは二個師団。中でも防空戦闘に長けた兵科が多めに配属されている。また、更なる戦力の投入も予定している。

「やはり、ヲ島を奪取する事で帝都を直接狙いたいのでしょうか」

ヲ島は帝都の目と鼻の先だ。高速船でなら一週間も掛からず、『ドール』であれば二晩に到達してしまうだろう。機神に至っては一刻も掛からない。

また、ヲ島は付近の各種要衝に極めて近い。不沈空母と呼ばれる航空基地や、帝都南方に位置する油田、『真実結界』を構成する四大要塞等々。此処を取られれば、各所が空襲されるのは火を見るより明らかである。

「まぁ、そうでしょう。故に、機神を撤退させる為に大戦力を投入します」

「追加ですか」

「いえ。既に投入されています」

そう言って、アルカディアは机上に広げられたヲ島の地図の一部を指差した。

「ここの一機は白夜が交戦しています。あの人なら万が一にも負けはしないでしょう。劣勢になれば、即座に『荒魂』の力を二割与えます。もう二機のうち一機は、

 

「敵機神一機、我が艦隊に接近中との報有り!!」

 

敵襲。空襲警報が発令、サイレンが響き渡る。

「此処に来ますから、」

「参謀長官!? 機神が来ます! 退避を!!」

「海の上、逃げる場所は有りません。機動力はあちらの方が上、どの道です。此処で一機を足止め、もう一機はコルホスΣの分隊に任せます」

艦隊輪形陣の、最外殻の艦が対空射撃を開始した。旗艦『日元』も、主砲による対空攻撃を開始する。機神の機動力を考えれば、この攻撃が開始して艦隊直上にまで到達するのはそう遅くない。

「コルホスΣ、ですか。あの新規編入された傭兵部隊に、機神を相手どって時間を稼げるとは思えませんが」

「コルホスΣは、戦力的には『大隊』と評価していますが、実際には一個神隊だと私は評価しています。それも第五位に組み込めれる程に」

「過剰評価と思います。第五位に坐すのは

「分かっていますが、あくまで私の意見という事を忘れずに。コルホスΣはヲ島西部海岸線にて機神を迎撃、これをよければ撃退、無理なら出来る限りの時間稼ぎと命令して下さい。撃滅なんて事は考えないで、との追加で」

「了解しました」

艦隊の一隻が、機神の攻撃を受け轟沈する。蟷螂の斧を分かっているものの続く対空射撃。アルカディアの部下は即座にコルホスΣに打電する。アルカディアは愛刀の『天弐絶剣』を抜いて、甲板に出た。上空には、大柄な男のような姿をしている一体の機神。過去、神群を蹴散らし、『蒼の大陸』に住まう起源神護衛の神仏を抹殺し、帝都大空襲にて甚大な被害を与えたレイ大陸最強の兵器。アルカディアが見つめる先に居る機神は、帝国軍のデータベースに存在しない新型のようだ。常に最善手を打たねば撃退はおろか、自分が殺されてしまうだろう。

 

「貴様ハ、何者カ」

 

機械音声。アルカディアの耳元で囁くように聞こえるそれは、聞く者全てに畏怖を与えるだろう。今回のアルカディアもその限りでは無い。正直指も肩も震えている。叫び、背中を見せて全速力で逃げたい。

だがそんな訳にはいかない。今アルカディアが守るのは、第二艦隊に所属している全ての兵士、大きくするならば全帝国民である。みすみす背中を見せて、彼らを見捨てれるものか。

「此処で逃げたら、理想郷の名が泣くわ」

アルカディアは誰にも聞こえない位小さな声で、自分を叱咤した。

 

「私は帝国軍参謀長官、セイジ=幻=アルカディア。機神、お前は此処で私に壊される」

 

アルカディアは愛刀の柄を持つ力を強めて、嫌悪の対象に突っ込んだ。